特徴は「対話型」と「半製品」、地場産業を語り継ぐ神戸パールミュージアム
神戸市は世界で流通する真珠の約7割を選別・加工しているとされ、約220社の真珠関連業者が集積する「パールストリート」と評される一帯も存在する。明治中期より、生産地である三重県や愛媛県から神戸港を介し、欧米向けに輸出が始まった。以来、真珠の一大集積地として名をはせてきた。
2008年、日本真珠輸出組合(神戸市中央区、清水勝央理事長、078・331・4031)が日本真珠会館(同中央区)の1階に「神戸パールミュージアム」を開設した。1893年(明26)より発展を遂げてきた日本の真珠養殖の歴史や、神戸と真珠産業との結びつき、模型を用いながらアコヤ真珠ができるまでの工程を解説している。
内海芳宏専務理事は「神戸の真珠産業は指輪などの『完成品』よりも大きさや形、色などで選別の上、ネックレス用に穴を開けるなどの加工を施した『半製品』が占める割合が多い」と話す。内海専務理事は同ミュージアムの特徴について「(完成品が少なく)展示品も限られるため、私もしくはスタッフによる解説をメーンとした『対話型』のミュージアム」と説明する。
同会館は鉄筋コンクリート造り地上4階建てで、築60年を超える建物。国の登録有形文化財や経済産業省の近代化産業遺産にも登録されている。真珠の原珠をオークション(入札)形式で取引する場として開設された。当時としては最先端の全自動エレベーターや全館蛍光灯設備などを備え、モダンな空間が広がる。1995年の阪神・淡路大震災では建物内の家具などは倒れたが、建物自体に大きな被害はなかった。
累計来館者数は約1万人。市内の小・中・高校生の社会科見学のほか、約3割程度は訪日外国人(インバウンド)の観光客が占める。その理由を「ダイヤモンドの研磨の街として名高い『ベルギー・アントワープ』同様、『パールと言えば神戸』と世界的に名高いから」(内海専務理事)とみる。次代に地場産業の歴史を語り継ぐ。
【メモ】
▽開館時間=10―17時▽休館日=土・日・祝日、年末年始、夏季休暇▽入館料=無料▽最寄り駅=JR・阪急・阪神各線「三宮駅」▽住所=神戸市中央区東町122▽電話番号=078・331・4031