「明治の酒蔵が帰ってきた」博物館で触れて体感する酒造り
兵庫県は清酒生産量で全国1位を誇る。うち全国の約3割近くの清酒を生産する西宮市と神戸市で古くから酒造りが盛んな地域として名高い「灘五郷」。その地域の一つ、「西宮郷」で「白鹿」の名称で清酒造りを手がけてきた辰馬本家酒造(兵庫県西宮市、辰馬清社長、0798・32・2761)は、創業320周年の1982年に「白鹿記念酒造博物館」を開館した
。同館は辰馬家が収集してきた美術工芸品や清酒関連の文献などを中心に展示する記念館と、19世紀後半から20世紀中頃にかけての酒造りの様子や工程、たるやおけなどの酒造用具を見学できる酒蔵館の2館で構成。「酒造りの歴史だけでなく、酒器や飲酒風景を描いた錦絵など、飲み手側から生まれた酒にまつわる文化も学べる」(弾正原佐和〈だんじょうばら・さわ〉副館長)と、地場産業の歴史を語り継ぐ。
95年の阪神・淡路大震災では、れんが造りだった当時の酒蔵館が全壊。現在の同館は1869年に建設された木造蔵の中に位置する。同社の本蔵として使われ、戦災や震災にも耐えた建物だ。1998年に「明治の酒蔵が帰ってきた」をコンセプトに再建した。
震災以降の試掘調査で発見された酒米を蒸す釜場の遺構や兵庫県と西宮市の重要有形民俗文化財に指定されている酒造用具などを展示。現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため触れないが、おけやたるづくり用具は「手入れすれば実際に使える民具。当時の創意工夫を感じてほしい」(同)との考えから見学のみ可能だ。
19年の来館者数は約2万1000人。市内小学生の社会科見学のほか、個人旅行を中心に訪日外国人(インバウンド)の観光客も約400人が来館した。「滞在時間が長い方も目立つ。日本人では気づかない点に美しさや驚きを見いだされているようだ」(同)という。アフターコロナを見据え「触れて体感する」の基本理念を踏まえつつ、来館者への安心安全を意識した運営に努める。
【メモ】
▽開館時間=10―17時(最終入館16時半)▽休館日=火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始・夏季休暇▽入館料=400円(消費税込み)▽最寄り駅=阪神電気鉄道阪神本線「西宮駅」▽住所=兵庫県西宮市鞍掛町8の21▽電話番号=0798・33・0008