LIXILの建材生産「改革は順調」、部品標準化・ライン削減
LIXILが建材事業の構造改革で徐々に成果を出している。約3年前から部品点数の削減などに取り組み、生産ラインの削減や新商品開発期間の短縮につながり、「改革は順調」と瀬戸欣哉社長は自信を示す。ただ2021年3月期は新型コロナウイルス感染の影響を受けるとみられ、改革の歩みを止めず、前進し続けられるか試練を迎える。(大城麻木乃)
【10商品1ライン】
「従来は10商品をつくるのに10の生産ラインが必要だった。今は10商品でも1ラインで済む」。国内の建材事業を統括する吉田聡取締役はこう断言する。
LIXILは17年から標準化による部品点数の削減などの構造改革に着手。生産ラインも大幅に削減した。
ラインの削減に最も寄与した取り組みは「開発・設計担当者と製造部門が新商品開発の段階から一緒に関わるようになったこと」(吉田取締役)だという。両者が一体となり、設計の段階から既存の生産ラインを生かしつつ、いかに新商品を開発できるかを考えることで、新たなラインの構築を減らした。この結果、建材事業の設備投資額(非開示)は「3年前より半減した」(同)と強調する。
【デザイナー2倍】
生産ラインの制約はあるものの、これまでにはない斬新な商品を開発するため、建材事業のデザイナーを3年前の2倍の30人に増やした。併せて新商品開発から発売までのサイクルも高速化。従来は企画から発売まで2―3年かかっていたのを「今では1年に短縮した」(同)という。
建材事業の中でもインテリアとエクステリアで成果が表れ始めた。4月にはインテリア商品「ラシッサ」シリーズで、住宅内装用の木質床材では業界初とみられる抗菌加工の認証を取得した床材などの新商品の発売にこぎつけた。消費者の好みが目まぐるしく変わる中、「開発期間を短縮できたことは市場のニーズに合った商品をスピーディーに発売できる」(同)と力を込める。
課題は窓サッシ商品だ。ライン削減や新商品開発に時間がかかり、まだ目に見える成果が出ていない。ただ、5月末の決算説明会では「来秋」としていた新商品の発売時期を「来春に前倒す」(同)といい、改革の遅れの取り戻しを急ぐ。
決算説明会ではアナリストから建材事業の生産改革に関する質問が相次ぐなど、市場も成果を注目する。
野村証券は関係会社を含むLIXILグループの業績見通しのリポートの中で、新型コロナで事業環境は厳しいものの、会社全体として取り組むデジタル化や主に建材事業で取り組む生産現場の改革により「22年3月期以降、業績は回復する」と予想した。LIXILがアフターコロナで浮上するには、建材事業の構造改革が一つのカギを握る。