レジ袋有料化、“脱プラ”で経済効果は1.4兆円
7月1日からレジ袋の有料販売が義務化される。国はレジ袋の使用削減をきっかけに、プラスチック製品の廃棄量を減らす“脱プラ”の加速を期待する。他のプラ製品にも削減やリサイクルが波及すると1兆円以上の経済効果が見込まれており、企業の間でも工夫を凝らした脱プラが始まっている。(編集委員・松木喬)
環境省が旗振り 過剰使用見直し、国民啓発
環境省は25日、レジ袋の使用削減を呼びかけるキャンペーンを始めた。テレビCMや電車の広告を使い、マイバッグの持参を国民に啓発する。キャンペーンの告知イベントで小泉進次郎環境相は、店頭でレジ袋の提供を断る人が3割にとどまっているとし「12月までに6割にしたい」と意気込みを語った。
レジ袋有料化の議論が本格化したのは2019年6月。当時の環境相と経済産業相が相次いで有料化を目指すと発言し、議論が加速。政府は容器包装リサイクル法の省令を改正して有料化を決めた。対象はプラ製レジ袋だが(1)植物由来原料を25%以上含む(2)厚さ0・05ミリメートル以上―などの例外がある。ただ、植物由来原料を含んだレジ袋も開発費がかかっており、有識者からは一律で有料にすべきだという意見もある。7月からは事業者により植物原料含有レジ袋が無料と有料に分かれた。
レジ袋有料化の背景に「プラごみ問題」がある。ただ、日本で発生する年900万トンの廃プラのうちレジ袋は数%にすぎず、プラごみ削減の効果を疑う声もある。小泉環境相も認識しており「(レジ袋有料化は)地球規模の課題に関心を向けてもらうきっかけ」とする。
その課題の一つが、海に漂うプラごみ問題だ。陸から流出し、波で砕かれて細かくなったプラ片は回収できなくなる。15年のドイツでの先進7カ国(G7)首脳会議で「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」が出されるなど、国際社会はプラごみを「世界的な脅威」として警戒してきた。欧米やアジアでは、ストローやスプーンなど使い捨てプラ製品の使用を禁止する国・地域が増えている。レジ袋も60カ国以上で規制済みだ。
国内のプラごみも課題だ。年900万トンの廃プラのうち6割は化石燃料代替として焼却し、製品への再利用は2割台にとどまる。また日本は、年約140万トンの廃プラを資源として輸出していたが、中国が17年末に輸入制限すると国内で処理しきれなくなった。国内でのリサイクル強化が求められる。
また、日本人1人当たりの容器包装プラの廃棄量は世界2位であり、過剰なプラ使用も見直しが迫られる。国はすべての廃プラを有効利用し、リサイクル材や植物由来素材の利用を拡大すると、1兆4000億円の経済効果と4万人の雇用を創出できると見込む。
企業の動向は…
企業でも脱プラが進んだ。積水ハウスは18年11月、自社オフィスの自動販売機でペットボトル飲料の販売をやめ、会議でもマイボトルや紙コップでの飲料の提供に切り替えた。19年は社内でのペットボトルの購入が前年比7割減、本数にすると37万本削減する成果が出た。独自のマイボトルも製作し従業員に配布して啓発している。
富士通も3月までにグループ会社を含めた国内拠点にある1500台の自販機でペットボトル飲料の販売を中止した。損保ジャパンは自宅で余ったマイバッグを従業員から提供してもらっている。社内の売店でマイバッグを配布して従業員に使ってもらい、商品を職場へ持ち帰った後は回収箱に戻す。レジ袋の削減とマイバッグの有効活用になっている。
脱プラによって業種を超えた連携も生まれた。パナソニックとアサヒビールは植物由来のセルロース繊維を混合したプラを使い、ビールを注ぐタンブラーを共同開発した。セルロース繊維は重量比55%以上含まれており、石油原料の使用を抑制できる。
もともとパナソニックがセルロース繊維混合プラを開発、18年から掃除機に採用していた。2社はマイカップによるプラ削減に貢献しようとタンブラーを開発。19年夏のJリーグの試合でタンブラーと生ビールを一緒に販売した。20年は創業者・松下幸之助の直筆の書をデザインして売り出すなどマイカップ持参の習慣化に貢献する。