“健康人財”育成! ロート製薬が主体的な健康づくりを後押し
社内通貨の付与・卒煙競争
“健康人財”であふれる会社を目指すロート製薬。心身の健康づくりを後押しし、働きがいを持って日々の仕事に取り組むことができる人材を育成する。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、テレワークや時差出勤の適用を拡大する一方で、運動不足やメンタルの不調を解消するサポートを充実させている。(大阪・中野恵美子)
ロート製薬は1970年頃、健康増進を目的に毎朝のラジオ体操を始めた。80年頃には国内の全社員が参加する運動会を開催、今日まで数年に1回の頻度で実施してきた。02年からは健康診断と併せて体力測定を行い、健康管理を本格化した。
健康経営推進グループリーダーの西脇純子氏は「自発的に健康管理できる人材を育成する」との方針を明確にする。14年には「あしたのロートを考える」の各文節の頭文字を取った「ARKプロジェクト」を始動。社員の発案で新しい働き方を創造する。兼業や他部署での業務を通じ、個人の成長を後押しする新たな制度の創設につながった。
同年「チーフヘルスオフィサー(CHO)」を設置、ジュネジャ・レカ・ラジュ副社長が兼務している。従業員の健康増進を経営戦略に位置付け、日々成長するポジティブなエネルギーを家族や社会の健康につなげる。
主体的な健康づくりを後押しするため、19年1月には独自の社内通貨「アルコ」を導入した。日々の歩数や早歩き時間、スポーツ実施や非喫煙といった健康的な生活習慣の実施状況に応じ、社内通貨を付与する。獲得した通貨は自社で運営するカフェやレストランでの健康食チケットや、リラクセーション施設の活用などに充てることができる。
特に喫煙率の低減では一人ひとりが健康被害を理解し、自らの意思で喫煙習慣を卒業する「卒煙」に注力してきた。96年時点では約30%だった喫煙率は、2020年4月に0・1%まで抑えられた。喫煙率が高かった上野テクノセンター(三重県伊賀市)では社員の発案でユーモアある仕組みを導入。「卒煙ダービー」と題し、喫煙者を競走馬に見立てて社員が支援者となる。卒煙にこぎ着ければ景品を用意するなどし、参加者全員が3カ月で喫煙率ゼロに達した。
同社は女性社員が6割を占めることから、女性の健康づくり支援を拡充した。乳がん検診や子宮がん検診の無料化に加え、18年度から“かくれ貧血”といわれる潜在性鉄欠乏症を検査するための血清フェリチン検査を無料化した。
疲れや頭痛、肩こりにつながる鉄不足の解消につなげる。
新型コロナの対応では「働き方を見直す機会にもなった」と西脇氏。テレワーク中の社員に体操や検温を促すほか、健康クイズを配信することにより「ヘルスリテラシーを向上させる」(西脇氏)。同社の健康推進グループには保健師や産業医らが所属する。メールを通じて日常で気を配るべき点をアドバイスするほか、不調を感じた人の健康相談にも乗るなど細やかなケアを欠かさない。