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休業中の大手百貨店が資金確保に動く、CP発行や融資枠設定

利益回復には相当の時間
休業中の大手百貨店が資金確保に動く、CP発行や融資枠設定

大手百貨店は休業に伴う資金繰り悪化の回避に動く

新型コロナウイルスの感染拡大で休業している大手百貨店が、資金繰りの悪化回避に動いている。短期資金調達のため発行する無担保証券、コマーシャルペーパー(CP)の追加発行やコミットメントライン(銀行融資枠=用語参照)の追加設定などで手元資金を厚くして難局を乗り越える構えだ。だが、新型コロナ収束後も利益回復に時間を要するとみられ、長期にわたり厳しい環境下での経営を強いられそうだ。

首都圏の6店舗が休業中の三越伊勢丹ホールディングスは、2019年度(20年3月期)に、CPを300億円追加発行した。また額は明らかにしていないが、主要な金融機関に対して800億円規模の融資枠設定を要請したとみられる。同社の3月末時点の現預金は743億円で、「全店休業が続いても半年くらいは耐えられる」(同社)という。

高島屋は300億円のCPを発行済みで、3月末時点で現預金が900億円ある。今後もコミットメントラインや債権流動化など機動的な資金調達で運転資金を確保する。

大丸松坂屋を運営するJ・フロントリテイリングもCP発行のほか、「コミットメントラインなどの資金調達枠を確保できている」(山本良一社長)。2月末時点の現預金は346億円を計上した。

特定警戒都道府県以外の地域にある店舗では、休業要請が解除されたことを受け、順次再開に向けて動きだしているものの、消費者の意識変化で「コロナ以前の状態に戻るとは考えていない」(高島屋)。

外出自粛により各社とも好調な電子商取引(EC)事業を抱えるが、財務基盤を安定させるほどの収益になるには、まだ時間を要するのが現状だ。

【用語】
コミットメントライン(銀行融資枠)=金融機関と契約した期間・金額の範囲内であれば、金融機関はいつでも貸し付けると約束(コミット)した融資枠。緊急の資金調達が可能で、短期の運転資金確保に備えられる。企業は金利とは別に手数料を支払う必要がある。
日刊工業新聞2020年5月13日

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