個包装は増、イベント向けは減。感染防止で揺れるプラスチック包装
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、スーパーマーケットなどでは商品にウイルスが付着するのを防ぐため、あらかじめフィルムやパックで、総菜や焼きたてパンなどを個別包装して売るケースが増えている。休業要請を受けて通常の営業を控え、持ち帰り対応や宅配のサービスを始める飲食店も目立ってきた。こうした動きは食品包材の需要を押し上げており、メーカーは生産に追われる。一方、経済活動が停滞したことで一部の商品は販売が鈍っており、業界には不透明感が広がっている。
“脱プラ”急変
グンゼは「“脱プラスチックフィルム包装”の流れから一転して、プラスチック包装による対策に流れが急変してきた」と説明する。同社は、野菜向けに展開する抗菌タイプのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムの引き合いが増えており、守山工場(滋賀県守山市)と、製造子会社の福島プラスチックス(福島県本宮市)がフル稼働で対応する。
感染防止対策で、外出せずに自宅で過ごす“巣ごもり消費”も活発だ。ユニチカは巣ごもり消費が増えた影響で、加工食品や液体を扱う食品包装用ナイロンフィルムへの引き合いが強い。
住友ベークライトではカット野菜などを包むフィルム製品「P―プラス」の需要が高まっている。P―プラスはフィルムにミクロ穴加工などを施し、酸素の透過量を調整することで、青果物の鮮度を保持する包材だ。外出自粛要請を踏まえ、買いだめをする消費者が増えた点が影響していると見ており、生産量を増やして対応している。
2倍の売れ行き
飲食店からの、持ち帰りやデリバリー向け食品容器の需要も高まっている。包装用品の卸売りを手がけるシモジマは「2019年10月の軽減税率導入で持ち帰り容器の需要が増えていたが、足元ではさらに注文が増えている」と話す。丼物やカレー向けが人気といい、前年と比べ約2倍の売れ行きの商品もあるほどだ。
イベント向け減
一方で「百貨店での催事や花見といったイベント向けの需要が減り、休業する飲食店も多い」(シモジマ)ことから、全体での増減については、見通しが難しいとしている。
包装用フィルムを手がける東洋紡も「巣ごもり消費の影響により需要増となる製品と、営業活動の自粛で需要減となる製品との差が大きく、動向が掴みづらい」と話す。
三菱ケミカルは業務用の食品包材「ダイアラップ」などを展開。中食用の引き合いが増加する一方、外食産業で食品保存などに用いる包材の需要が落ちており「トータルでは、(販売量は)若干のマイナスになる」と予想している。
新型コロナ感染拡大は収束の兆しが全く見えず、業界は当面、対応に追われそうだ。