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佐藤可士和氏を起用、楽天が培った「デザインのチカラ」

佐藤可士和氏を起用、楽天が培った「デザインのチカラ」

佐藤可士和氏㊨を交えたクリエーティブチェックの様子

経済産業省が2年前に発表した「デザイン経営」宣言では、デザインを活用した経営手法の推進が提言された。それには(1)経営チームにデザイン責任者がいる(2)事業戦略の最上流からデザインが関与する―ことが必要条件と定義されている。この宣言が発表される15年も前から、チーフクリエーティブディレクターに佐藤可士和氏を起用することで、経営の核にデザインを置き、ブランディングを強化している企業が楽天だ。

佐藤氏が最初に手がけたのは、コーポレートロゴのデザイン。2004年にプロ野球への参入を表明し、東北を本拠地とする初のチームということで注目を集めた結果、社名の認知率は一気に上昇した。これに付随してブランド力も、人気企業と肩を並べる水準へと飛躍を遂げた。デザインはブランドを体現する一つの重要な要素だということを示している。

同社では経営との整合性やブランドの質を保つため、クリエーティブの確認プロセスや体制を設計している。具体的には佐藤氏、ブランドを監修するチームと事業部が、高頻度で定例的な会合を行い、確認と決定を行う。さらに三木谷浩史会長兼社長も交えた意思決定の場も設けている。方針が決定しているものは、ブランドガイドラインなどを含めたナレッジ集に集約。監修チームで正しく運用されているかチェックする。

また、ブランドにどれだけ寄与するかといった点や、アセットの重要度などに応じて、確認プロセスやスピード感を調整し柔軟に運用している。さまざまなプロジェクトから生まれてくる膨大なクリエーティブに対応しながら、品質を上げるための措置だ。

新しい取り組みとして18年よりデザインの力によってビジネスをより強力にアシストするデザイン組織「Rakuten Design Lab」が、佐藤氏の提案によって発足。経営とデザインを近づけることで、ブランド価値の最大化を目指している。

ブランドは開発して終わりではなく、組織・体制・確認プロセスをデザインし、運用するという後工程が重要な役割を果たす。(松田雅史・デロイトトーマツベンチャーサポートMorningPitch・新規事業開発ユニット)

日刊工業新聞2020年4月10日

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