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楽天常務が考える本気のサステナビリティー、“社会貢献しないのは罪”

楽天常務が考える本気のサステナビリティー、“社会貢献しないのは罪”

昨年12月に開催したサステナビリティー活動の報告会。創業時の写真の前で説明する小林常務執行役員

楽天は環境や社会に貢献するサステナビリティー活動の発信を強化している。2019年12月には活動報告会を開き、小林正忠常務執行役員チーフ・ウェルビーイング・オフィサー(CWO)が「報告が世の中を変える一歩」と強調した。評価機関の格付けや環境推進団体への参画をPRする企業が多い中で、なぜ伝えることにこだわるのか。楽天の創業メンバーである小林常務執行役員に聞いた。

―発信する理由は。
「サステナビリティ部のメンバーは、楽天が持続可能な社会に向けてすごい力を秘めた企業と思っている。三木谷(浩史=会長兼社長)や私が語っていないことであり、うれしい。一方で彼らからは、自分たちだけで満足しては駄目だと言われた。企業が社会貢献する意義を本気になって発信しないと共感を得られず、良いことをする人が増えないからだ。良いことをする人が増えなければ、社会は良くならない」

―しかし、楽天は投資や事業拡大ばかり注目されています。
「どう実現するのかの“HOW”は伝えても、なぜ取り組むのかの“WHY”を伝えてこなかった。97年の創業時、地方には商圏が小さいばかりに成功や成長できない企業があった。そこで私たちはインターネットショッピングを立ち上げた。楽天は世の中を元気にし、その対価で成長してきた。今も、地域を元気にして日本全体を元気にしたいという思いはブレていない」

―楽天の取り組みがあっても、地方の衰退は続いています。
「大きな流れとして人口減少が起きている。それに対し、テクノロジーで何かできないのか自治体の方々と議論している。買い物難民の解消、観光資源の有効活用、誇りを持てる仕事の創出もある。楽天の役割は多い」

―19年12月の報告会では、楽天社員が全国10校の高校生と一緒に地域課題を考えるプロジェクトの成果を発表しました。
「あえて大都市から離れた地方の高校と活動している。その成果を発信すると、他の地域でも取り組みたいと思ってもらえる。実は他社のサステナビリティー担当者も見学し、自社でもやりたいと言ってくれた」

―社会貢献活動は、企業の自己満足に陥りがちな面もあります。
「19年秋、米国でサステナビリティー関連の会合に参加した。その場で海外企業はお互いの強みを掛け合わせたら何ができるのか議論し、連携を呼びかけていた。我々も日本において他社と歩みをともにしたい。手柄を抱え込み、私だけがかっこつけたいのではない。1社で世の中を変えられない。人類の課題を仲間と解決していきたい。そう考えるとワクワクしてくる」

楽天常務執行役員CWO・小林正忠氏

【記者の目/積極的な発言、増加に期待】
小林常務執行役員は楽天が社会に貢献しないのは「罪だ」とも語っていた。ネット販売で消費者に環境に配慮した商品を薦めるだけでも大きな貢献ができるが、それを放棄することが「罪だ」という。これまで日本企業からは控えめな発信が目立った。もっと積極的な発信が増えてほしい。共感してもらえないと企業のせっかくの活動は評価されない。(編集委員・松木喬)

日刊工業新聞2020年2月7日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
楽天は高校生との地域課題解決、環境・社会に貢献する商品のネット販売サイト「アースモール」、再生エネ普及・利用(RE100にも加盟)などに取り組んでいます。その企業ならではの具体的な活動を聞くのは楽しく、印象に残ります。CDPの評価、TCFD提言への賛同だけでは、何をやっている企業なのか理解できません。仲間を増やすために発信しましょう。7日付SDGs面から(14日付SDGs面は「チョコレート産業とSDGs」の関係に迫ります)

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