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【新型コロナ】工場稼働率の低下を逆手に…受注の“谷”を人材教育に生かす

逆風を逆手に―。向洋技研(相模原市緑区、甲斐美利社長、042・770・4306)は、新型コロナウイルス感染症の拡大による工場稼働率低下の中で、技術者の多能化や教育に注力する。得意とするテーブルスポット溶接の人員をユーザーのメンテナンスやIT化に振り向けるほか、製造部のミーティングを実施し教育やコミュニケーションの基礎を学び直している。(取材=相模支局長・石橋弘彰)

向洋技研はかねて、従業員に対して溶接や組み立てといった製造だけでなく、設計や営業を経験する多能化に力を入れてきた。「中小企業なので全ての仕事を知らないと何かあった時に役に立たない人になってしまう」(甲斐社長)という考えからで、普段から別の仕事を手伝うなどして全体を学ぶ。

現在、新型コロナの影響で工場の稼働率が低下している。だが一方で、ユーザーの製造現場でスポット溶接機のメンテナンスの要望が増えている。そこで、製造メンバーに積極的にメンテナンスへ行ってもらい、実際の製造現場を見て、ユーザーの声を聞き、時間内に作業を終える、といった経験をさせている。甲斐社長は「直接現場に行くと製品の理解が深まる」という。

教育面でも、製造部では2月に始めたミーティングを人材教育の基礎として活用している。もともとは「受注の山谷で、工場に余裕が出ることを生かして始めた。忙しくなったら不定期にする予定だった」(甲斐豪取締役兼製造部長)が、新型コロナ感染症の拡大を受けて2、3週ごとに全員が集まり、感染症対策をしつつ議論している。

主な狙いは意識改革だ。ミスと無駄に対する考え方や、行動には理由と根拠があること、指導と教えることの違いなどを議論してきた。司会役を務める児玉繁俊エキスパートは「コミュニケーションの仕方や報告、連絡、相談の重要性といった基礎的過ぎて忘れがちなことを学び直している」とし、参加者の反応や感想の内容から、理解が浸透していると手応えを得ている。

最も若手の参加者である東樹章浩氏は「実際の報告や打ち合わせに学んだことを生かせる。継続してほしい」と話す。甲斐取締役によると、いずれは参加者が外部で何かを学び、それを披露する場にしたいという。甲斐社長も「ミーティングは忙しくなっても継続してほしい。こうしたレベルアップは繁忙期でも効率化などに生きる」と期待を寄せる。

日刊工業新聞2020年4月7日

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