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MRJは日本の航空機産業を変えるのか(下)

「モノづくり日本会議」の講演会から
MRJは日本の航空機産業を変えるのか(下)

「航空機は中抜け産業だ」と萩本副会長

 国産小型旅客機「MRJ」の初飛行を前に、航空機産業の現状と課題をさぐる講演会。

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航空機産業「泥臭い」―多摩川精機・萩本氏



【多摩川精機副会長・萩本範文氏講演/航空機産業の振興を目指す】

 航空機産業は華やかに語られるが、参入は泥臭く難しい。自動車産業のように裾野が広く、地方の中小零細企業にも影響が行き渡る産業に育てるためには、もう少し時間がかかるだろう。ではどうすれば良いのか、日々考えている課題を話したい。
 当社が拠点を置く長野県飯田市の事例を話す。長野県は精密機械産業を基盤に発展してきた地域。今後はそれが新興国との競争になると考え、2006年の地域産業界の会合で航空機産業を次の産業に育てようと呼びかけた。
 理由は、精密機械産業は航空機産業との類似性が高く転換が早いと感じたからだ。また精密機械産業のサプライチェーンネットワークは既にあるが、航空機産業は未成熟で参入余地があると考えた。加えて航空機産業には将来性があり、今後航空機の需要がアジアを中心に増えること、長野県から近い愛知県に航空機産業が集積していたこともある。

 06年には、地元37社で「飯田航空宇宙プロジェクト」を発足した。飯田だけの問題ではなく一般的に、航空宇宙産業は挑戦しようにも中小零細企業にはハードルが高い。
 それを解決するには、事業連合組織を形成するなど集団を大きくする必要がある。他にも課題は山積みだ。技術不足であり、製造容量が小さいので仕事が入ればあっという間に人手不足に陥る。また地域に一人まとめ役が必要だ。そして資金の問題もある。

日刊工業新聞2015年09月日付け紙面を再編集
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 航空機の世界は、よく20年単位で物事を決めます。メーカーも、エアラインも、かなり先の市場動向を予測し、今すべき投資を実行していきます。  さて日本。ボーイング機増産にMRJが重なり、国も地方も航空機産業の振興に走り出しています。とはいえ航空機産業の参入障壁は高く、時間もお金も、そして精神力(長い投資回収期間に耐える経営者の胆力)も必要です。そして、「基幹産業」といえるだけの存在感を持つためには、いつかはボーイング、エアバスの牙城に挑むことも、必要になってきます。  40年前、YS-11で挫折した「基幹産業化」の道を、日本はこじあけられるかどうか。まずはMRJが試金石になりますが、来たるべき次期国産旅客機に向けて、参入できるメーカーを1社でも多く育てるべきだと考えます。

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