MRJは日本の航空機産業を変えるのか(下)
「モノづくり日本会議」の講演会から
航空機は「中抜け産業」
当たり前だが、航空機産業は航空機が売れて売り上げが立つ。下請けの中小零細企業にとってもお金の回転率の悪い産業だ。(部品メーカーにとって)簡単に収入に結びつく仕事は少なく、開発など長い下積みの期間を耐えなければならない。この間の資金繰りは大きな課題。長期的に資金確保できる手法も考える必要がある。
また日本は機体製造ができ部品はできるが、装備品やシステムの供給ができていない「中抜け産業」の国。世界の航空機装備品メーカー上位100社の中で、日本は2社のみだ。
米ボーイングは2034年には、世界の空を4万3500機の航空機が飛ぶと想定している。そのためには、これから20年間で3万8050機を製造しなければならないが、製造力が足りていないと考えている。ここまで目標が明確な産業は他にない。だから日本の航空機産業にとってはチャンスなのだ。
部品加工だけでは航空機産業の集積ができたと言えない。システムや装備品を作らないと産業にはならない。日本は防衛機のシステムや装備品はほとんど国内で作っているのに、民間航空機にはほとんど未参入だ。新しいプレーヤーも迎え入れ、名実共に日本製の機体を作れるようにしたいものだ。
「完成品」登場のインパクト大きい
【日刊工業新聞社名古屋支社編集部記者・杉本要講演/変わる航空機産業のモノづくり】
なぜ航空機産業は成長産業と言われるか。日本の航空機生産額は年1兆円前後で推移してきたが、ここ数年で一気に増え、2014年は1兆6000億円台になった。米ボーイングなどの長期市場予測でも今後20年で世界の航空機の数は倍増するとされる。
日刊工業新聞2015年09月日付け紙面を再編集