鴻海からノウハウ提供されたシャープのマスク参入、中国勢の俊敏力に見習うこと
不足するマスクの生産に異業種のシャープが名乗りを上げ、実際に1カ月足らずで製造ラインを稼働したことに感銘を受けた。親会社である台湾・鴻海精密工業が、中国での新型コロナウイルス感染の広がりを受けてマスク生産に参入。シャープにノウハウを提供した。その俊敏さと決断力は日本の電機大手に欠けているものだ。
エレクトロニクス領域で、日本勢が参入に及び腰になっている新分野はいくつもある。例えば省エネ型のLED蛍光灯。少数の新規参入勢を除いて、市場に出まわっているのは中国製ばかりだ。
蛍光灯はLED電球と違い、インバーター方式などの既存器具に誤って装着すると故障する恐れがある。だから大手は商品化せず、器具そのものの交換を呼びかけている。事情は分かるが、あまりにも後ろ向きに思えてならない。
この分野では、LEDと器具を一体化した「バーライト」が卓上電気スタンドに代わって普及し始めている。しかし主役は無名の中国勢。市場では日本は不戦敗状態である。
別の事例では「アンドロイドOS」などを使ったTVボックスがある。液晶テレビに接続し、ウェブや動画配信、インターネット放送などを視聴できるようにする。多機能の「スマートTV」を低価格で実現する機器だが、大半は中国製だ。
TVボックスは、米アップルや通販大手のアマゾンが商品化している。日本勢はゲーム機に類似の機能を持たせている。しかし家電メーカーの大半は知らんぷり。大手で唯一、TVボックスをラインアップに入れているのがシャープなのは偶然ではないだろう。
マスクのような異分野ですら俊敏に参入する決断力。日本勢も見習うべきだ。
(文=加藤正史)<関連記事>
数少ない白熱電球メーカー、100余年の生産に幕
日刊工業新聞2020年3月30日