創業家以外から初、村田製作所の次期社長が信じる言葉はインスタントラーメンにあり
村田製作所は中島規巨取締役専務執行役員(58)が社長に昇格する。電子部品業界は第5世代通信(5G)の普及や自動車の電装化などで大きく変化している。経営陣の若返りを図り、変化に迅速に対応できる事業基盤を構築する。中島氏は、創業家以外から初めての社長就任。村田恒夫会長兼社長(68)は社長の兼務を解き、代表権のある会長となる。6月下旬に開催予定の株主総会後の取締役会で正式決定する。
村田会長兼社長は中島氏の人物像について「リーダーシップを発揮し、ステークホルダーの期待に応える組織運営ができる」と評価する。中島氏は通信モジュール事業に長く携わり、スマートフォン端末や基地局向け部品事業などを成長させてきた。同社は海外売上高比率が90%以上と高い。中島氏はフランスなど海外勤務経験があり、海外事業に明るい点も買われたようだ。
変化の激しい電子部品業界の中で、部品販売が中心の“モノ売り”からモジュールやシステムといった“ソリューション提供”へと事業ポートフォリオの変革に拍車をかける。会長職に専念する村田氏は「俯瞰(ふかん)的に経営に関わることで社内のガバナンス(統治)体制強化を図りたい」という。
【略歴】なかじま・のりお 85年(昭60)同志社大工卒、同年村田製作所入社。10年執行役員、13年取締役常務執行役員、17年取締役専務執行役員。大阪府出身。
「執念なきものに発明はない」
電子部品が組み込まれる端末の変化を冷静に分析して、モジュール事業の戦略を練ってきた。既存事業の強化と併せて、事業機会の拡大に向けて指揮することになる。村田恒夫会長兼社長は「従業員からの信頼も厚いリーダー」と評する。
第5世代通信(5G)時代を迎えた通信市場、電装化が進む車載市場に一段と注力する。変化が激しい電子部品業界において、「現場レベルで素早い判断ができる自律分散的な体制作りに取り組む」との考えだ。独創的な技術や製品開発に積極的に取り組んでいく。
足元では新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、事業環境の不透明さは増している。ただ中長期の市場の伸びは確実であることから、成長に向け準備を固める。
休日はゴルフや野菜作りで気分をリフレッシュする。座右の銘は日清食品創業者の安藤百福氏の言葉、「発明はひらめきから。ひらめきは執念から。執念なきものに発明はない」。
(大阪・日下宗大)<関連記事>
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