無人店舗を支える裏側をのぞいてみよう
レジもなければ店員もいない店舗の登場が目前に迫っている。コンビニエンスストアやスーパーに入店し、好きな商品をバッグに入れてそのまま立ち去る―。決済はデジタル上で完結しているシームレスな世界がITの高度化で実現できそうだ。小売業界向けのデジタル変革(DX)を実現する大手システム構築(SI)事業者の動きを追った。(川口拓洋)
【1000店で導入へ】
NTTデータはレジなし店舗の出店サービス「キャッチ&ゴー」を2019年秋から提供している。スマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)で決済手段を登録し、発行される2次元コード「QRコード」をゲートにかざすと入店できる。手に取った商品はレジでの支払いをせず、そのままゲートから出るだけ。決済も完了する。東京都港区のデザインスタジオ「アクエア」に導入、運用しており、22年度までに小売業1000店舗の導入を目指す。
【顔認証で入店】
20年からは顔認証による入店と値札の電子化機能を追加した。顔認証は事前にスマホのアプリで自分の顔を撮影する。値札の電子化では価格を柔軟に変えられる。例えば在庫状況や利用者の趣味嗜好(しこう)により割引し、購買意欲を促進できる。NTTデータサービスデザイン統括部の新原友美課長代理は、顔認証と値札電子化機能のある実店舗を「20年内には1件目を実現したい。オフィスや工場など利用者が限られる店舗からになる」と話す。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、スマートストアだけでなく消費財メーカーや物流業者、小売り、消費者を含めたサプライチェーン全体のDXを進めている。流通第2本部CVSデジタルビジネス推進チームの高橋秀樹チーム長は「業務とシステムを融合する。店員がいないため、物流や品出し業務のデジタル化がカギになる」と強調する。
小売りのデジタル化を“面”で実現するため、伊藤忠商事と連携。伊藤忠グループのBPO(業務の外部委託)やマーケティングを担う企業、スタートアップと共創するほか、基盤にはマイクロソフトと組み、パブリッククラウド「アジュール」上の流通業向けのテンプレートを活用する。
【地方から要請】
20年4月以降には物流や店舗のバックヤード業務のデジタル化を支援するため、人工知能(AI)を活用し商品をスキャニングするデジタル検品のソリューションも開発する。CTCは19年12月から「次世代型リテールソリューション」の提供を始めた。現在300件以上の引き合いがある。少子高齢化を理由に地方店舗からの要請が多いという。高橋チーム長は「小売りのデジタル化は店舗を通じた街づくりにつながる。地に足がついたサービスを創りたい」と意気込む。