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デザインを経営の中心に据える動き加速、「無印良品」に学ぶべきこと

世界の有力企業の間で、デザインを経営の中心に据える動きが加速している。組織の文化を刷新し「変革」というソリューションを提供する役割を果たすからだ。一方、日本ではデザインの有効性を認識している経営者が少なく、経済産業省はグローバル競争上の弱みだと指摘する。デザイン経営力をいかに強化できるかが、日系企業にとって喫緊の課題だ。

ブランドは実態のないイメージの集合体でもある。ただ、そのイメージは資産でもあり、製品やサービスの価値の増大に寄与する。

資産化の前提条件は企業が明確なビジョンを定めていること。その上でデザインを駆使することにより差別化を図り、イメージを正しく伝達する作業が不可欠となる。

それに向けての体系を整備するには経営とブランド、デザインという3者が近接していることが望ましい。しかし、この条件を満たし、末端まで一本筋が通った経営判断がなされるケースは少ない。

要因のひとつが、ブランド価値向上に重要な役割を果たすデザイナーの配置の在り方。経営の中枢部を担い全体を俯瞰(ふかん)する立場なのに、十分に機能していないのが現状だ。

こうした中、アドバイザリーボードにデザイナーなどを積極的に登用する日系企業がある。「無印良品」ブランドを取り扱う良品計画だ。

同社は堤清二氏が率いる西友(現・合同会社西友)のプライベートブランドとして誕生した。堤氏は無印良品のコンセプトをデザイナーの田中一光氏やコピーライターの小池一子さんらとともに創り上げた。それが絶大な力を持つブランドへと昇華し、国・地域の枠を超えて世界中の人々の共感を得ている。

企業の志やフィロソフィーを訴求するには、経営とブランドの一体化は避けて通ることはできない。デザインは経営の質を高める原動力だ。

(文=秋山浩一郎)
【プロフィル】
秋山浩一郎(あきやま・こういちろう)デロイトトーマツベンチャーサポート第4ユニット。25年以上にわたってクロスメディアを軸に広告企画制作に携わり、大学でも教鞭を執った。富士通やDMMなどではデザイン部管理職に従事した。日本グラフィックデザイナー協会正会員。
日刊工業新聞2020年2月7日

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