JALは成長気流に乗れるのか、社長が100点満点と評価したLCC子会社
日本航空(JAL)にとって、2020年は大きなターニングポイントになりそうだ。3月に羽田空港発着の国際線が大幅増便。5月には子会社の中長距離格安航空会社(LCC)のZIPAIR(ジップエア)が成田―バンコクに初便を就航する。事業拡大のチャンスを生かせるか、これまでの準備の成果が問われることになる。赤坂祐二社長に、20年への期待と20年以降の展望を聞いた。
―今回の羽田空港昼間時間帯の国際線発着枠拡大では11・5枠増を確保しました。
「羽田国際線は(夜間と合わせて)22便から34便に増える。羽田は内際(国内―国際)ハブとして約200便の国内線と接続する。ローカル航空を含めたネットワークを存分に生かして、地方に訪日外国人客(インバウンド)を送りたい」
―30年の政府目標である訪日客6000万人に向けて施策は。
「6000万人の達成は海外のエアラインが鍵を握る。我々は協業や提携を重視しており、提携先が日本の地方空港に乗り入れる路線でマーケティングを手伝う。互いの顧客が満足できるモノを作るためには、コードシェア(共同運航)よりも共同事業を広げたい。国際線はボラタリティー(変動)が大きくてイベントリスクに苦しんできた。リスクをシェアする面もある」
―先日、ZIPAIRの機材を確認されていましたが感想は。
「100点満点。座席を詰め込むLCCとは違うことができるだろう。フルサービスキャリア(FSC)と同等の座り心地だ。JAL以外のFSCと競争できるようになればいい。JALはビジネス中心。ZIPは若者、観光向けでマーケットが違う。(狙いとする北米路線では)今まで日本に来られない、米国に行けない人をターゲットにしていく」
―整備部門における“故障しない飛行機”への取り組みは。
「故障を予測して整備する“予測整備”を目指して順調に進んでいる。どこかで急激に結果が出る時が来る。ボーイング787やエアバスA350は間違いなく予測整備ができる飛行機だ。エアラインの経営にとってメリットは大きい」
―航空会社に環境対応が迫られています。
「いつまでも化石燃料に頼るビジネスを続けるわけには絶対にいかない。バイオ燃料、電気とのハイブリッド、その先には電気飛行機。そういう時代は必ず来る。自分たちでやっていかないと。(開発に携わる)チャンスがないか常に考えている」
【記者の目】
来る20年を航空業界は期待を胸に待ち構える。赤坂社長は「いろんなことの集大成であり、いろんなことの始まり」と話す。積極的な提携戦略でネットワーク都市は目標を大きく前倒しして実現したが、新規事業の創出は遅々として課題だ。20年はJALにとって五輪後の将来を描く中期経営計画策定の年でもある。(小林広幸)