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破綻から9年のJAL、経営再建中に導入決めた初のエアバス機が背負う期待

14日朝、羽田空港に着陸した
破綻から9年のJAL、経営再建中に導入決めた初のエアバス機が背負う期待

羽田空港に到着したA350。9月1日から羽田―福岡線に投入する

 日本航空(JAL)にフランスから待望の新型機が届いた。14日朝、羽田空港に着陸した大型旅客機は欧エアバスの「エアバスA350型機」だ。日本企業とのつながりが深い米ボーイングの旅客機を主力としてきたJALにとって、自社が調達する機材としては初のエアバス機。経営再建中の2013年に導入を決め、仕様などを入念に検討して、この日を迎えた。新生JALの将来はA350の双翼にかかっている。(文=小林広幸)

 格納庫にA350が収まると、赤坂祐二社長はヘルメットをかぶって現れ、首脚周辺から胴体をチェックして回った。A350ではエンジンも初めての英ロールスロイス製を採用。整備出身の赤坂社長が「初物づくし。結構苦労するぞと思っていた」と話すように、未知のエアバス機導入には当初、社内に不安もあったようだ。

 A350の機内から機長とともにタラップを下りた植木義晴会長は「6年前の決断が正しかったと自信を持って帰ってきた」と笑顔を見せた。12年に社長に就任した植木会長が直面した最初の大仕事が、主力旅客機「ボーイング777型機」の後継機選定だった。

 経済性や環境性能などを総合的に考えた結果「将来のJALにとって、最善の選択だ」(植木会長)と、従来の延長線上でのボーイングの次世代機ではなく、挑戦を選んだ。当時は経営再建のまっただ中。31機で合計1兆円弱の大型調達に「金額を見てサインをするのに手が震えた」(同)ともいう。

 最新機のA350はさまざまな現場に変革をもたらしそうだ。機長らにとってボーイングの機材で慣れ親しんだ操縦かんは、エアバス機ではサイドスティックとなる。受領したA350を操縦してきた宮下篤機長は「未来の飛行機のようだ」と感想を漏らした。

 飛行や整備記録を記載する航空日誌も電子化される。到着を祝った式典で、植木会長は最初で最後となるA350の航空日誌を赤坂社長に手渡した。赤坂社長は、運航と整備のコミュニケーションで重要な役割を果たしてきた日誌の中身を確認して「(これと)何十年も付き合ってきた」と感慨に浸った。

 A350は座席に個人画面や電源を装備するなど設備を充実させて、フルサービスキャリアとしての、さらなる顧客満足度向上を狙いとする。式典では赤坂社長が「安全性、整備性にも優れた飛行機だ。自信を持ってやっていきたい」と決意を示した。9月1日の羽田―福岡線への投入を皮切りに、まずは国内線でB777の置き換えが始まる見通しだ。
日刊工業新聞2019年6月17日

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