弱点も克服、サービスロボットが街にあふれ出す
2020年は東京五輪・パラリンピックを契機に、観光地やスポーツ競技場に大勢の見物客が訪れるケースが予想される。そんなケースで活躍が期待されるのが、警備ロボットや清掃ロボット、案内ロボット、外食提供ロボットなどの各種ロボット。三菱地所や森トラスト、JR東日本、東京都立産業技術研究センター(都産技研)などが将来の利用に備えて、各地で実稼働実験を始めている。(取材=編集委員・嶋田歩)
【人に追従・運搬】
都産技研は東京ビッグサイト(東京都江東区)で、清掃ロボットや運搬ロボットなどの実稼働実験をスタート。運搬ロボットは先導する人間を自動認識して追従する能力があり、ゴミ箱の廃棄物を人が回収して専用コンテナに載せ、ロボットが人の後をついて運ぶ仕組み。
人の作業だとゴミが一定量に達した時点で特定場所に戻らなければならないが、ロボットを使うことで回数が減り、作業負担を軽減できる。
【エレベーターと連動】
三菱地所は東京・大手町や丸の内の自社所有ビルで、清掃ロボットや警備ロボットの導入実験を進めている。大きさやデザイン、建築年代などが異なる各種のビルで、それぞれに応じた最適のロボットで実証実験を行い、ビジネスモデルを確立する。“ロボットが活躍するビル”という先進的なイメージにより、入居企業の数・質のアップや知名度の向上につなげる。
19年12月には三菱電機のエレベーター連動システムを利用して、警備ロボットの上下階移動実験も行った。オフィスビルのロボット利用は、これまでエレベーターが弱点とされてきた。あるフロアで警備作業や清掃作業をしても、別の階に行くには人の介助が必要だ。エレベーター連動システムを利用することで、この不便が解消される。
ビル内でロボット利用台数を削減できるほか、セキュリティーゲートの無人開閉やロボット配膳サービスへの応用も見込む。
超高層ビルの窓拭きを行うロボットも、実験済みだ。超高層ビルの窓拭きは上空でビル風の突風が吹くなど、危険を伴う。作業ロボットの導入で清掃性能や効率の向上を図る。ロボットは日本ビソー(東京都港区)が開発した。
三菱地所は稼働率向上のため、窓拭き以外に外壁診断や塗装・シール打ち替え作業にロボットを使うことも検討している。
【24時間稼働可能】
清掃作業も警備作業も、人手不足が深刻な分野だ。深夜作業や重量物運搬といった「3K」のイメージが強く、若い人たちがなかなか確保できない。外国人労働者の場合も習熟度訓練や言葉の壁、定着率などの問題がある。
ロボットならば、24時間労働や連日の作業が可能で、寒い環境や危険地帯の作業でも対応ができる。五輪で観光客が増える分、これらの作業分野の人手不足は無視できず、ロボットにかける期待は大きい。
森トラストは、高層ビルでのロボットデリバリーサービスの実験を城山トラストタワー(東京都港区)で行った。自律走行型搬送ロボット「リレイ」で、1階の喫茶施設で注文したコーヒーなどを、上層階へ届けるサービスを想定する。デリバリーサービスを売りにビルの入居率向上へつなげる考えだ。
【コンビニ・外食】
コンビニエンスストアや外食の店舗なども、ロボットの導入や活躍が見込まれる分野だ。キュービットロボティクス(東京都千代田区)は「ロボットパスタショップ」の実験を、JR大宮駅構内でJR東日本グループと共同で行った。ロボットが調理したミートソース、カルボナーラソースのパスタ2種を、1日限定50食ずつ、消費税込み100円で提供。パスタは短時間でゆでられるショートパスタを使用、用意した分がすべて売り切れる人気だったという。
コネクテッドロボティクス(東京都小金井市)も外食向けの「ソフトクリームロボット」や「ビール注ぎロボット」、コンビニエンスストア向けの「ホットスナック調理ロボット」、食器洗浄ロボットシステムなどを開発している。「そばロボット」も、研究中だ。
コンビニエンスストアは店舗が多く、成功すれば数万台規模の注文が期待でき、コストダウン効果が見込める。同様に食器洗浄ロボットも外食チェーンなどで導入が決まれば、多数の注文が見込める。
清掃ロボットや警備ロボットを含めたサービスロボットの事業を軌道に乗せるには、技術上の課題解決だけでなく、市場性分析も必須となる。