人手不足問題、ロボットでどう乗り越える?
生産現場での人手不足が激化している。帝国データバンクの調査によると、2018年の人手不足倒産は153件発生したとのことだ。特に地方での人材不足は喫緊の課題である。人口減少による東京一極集中化は地方の労働力を奪う。
総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、18年の東京への移動者は13万6000人となっており、地方から都市への移動者が止まらない。地方で人材が確保できないとなると工場や店舗などの進出がされなくなる。すると、さらに人が少なくなり、衰退の道をたどることになる。
一方、希望も見える。ロボットビジネス支援機構(ロビジー)に従事する私の感想では「人手不足問題解決=ロボットの活用」という意識が社会全般に急速に広がってきているのは間違いない。
今となっては、この意識は当たり前になりつつあるが、つい2―3年前までは違った。多くの経営者がロボットをコストと考え、ロボットを導入するくらいなら人を雇うという考えだった。その頃に比べると、この意識の変化は明るい展望である。
柔軟性が武器
しかしロボットというと産業用ロボットを思い浮かべる人が多い。自動車メーカーや大手食品メーカーなどで動いているロボットだ。ところが産ロボの活用だけでは人材不足を乗り越えることはできない。
鍵となるのは、「サービスロボット」である。サービスロボットというのは「人間の傍で人間を支援するロボット」という意味として捉えれば間違いはない。このサービスロボットは産ロボに比べて柔軟性が大きな武器である。
ロビジー会員である住友重機械工業で扱っている「Sawyer(ソーヤー)」は、ロボットの手を人が動かしてあげることで動作を覚える。まるで新入社員に教えるように仕事を教えるイメージだ。
同じくロビジー会員のTHKが提供している「Platform Robot」は、遠地にいる人間型ロボットを遠隔操作する。ペットボトルをつかむなどの動作もでき、多くの業務を柔軟にこなす。
全現場に適用
ロボット化が全く進んでなかろうと、既に産ロボが多く活用されていようと、全ての生産現場ではサービスロボットの適用箇所が存在する。全くロボット化できていない工場の多くは業務があまりにも柔軟過ぎて産ロボの活用ができない。この場合はすぐにでもサービスロボットの活用を検討するべきだろう。
産ロボを活用し、多くの業務が自動化されている工場は、段取り部など人が動くしかないと思っていた業務にサービスロボット活用を検討するとよい。
サービスロボットの活用は一朝一夕で成るものではない。全ての生産現場は、今すぐにでも情報を集め、さまざまなシーンでのサービスロボットの活用を検討し始めるべきだろう。
◇ロボットビジネス支援機構(ロビジー)専務理事 伊藤デイビッド拓史
デロイトトーマツコンサルティング、企業の経営補佐などを経て現職。外食産業の自動化予想、各業界のロボット活用研究などロボットビジネスに資する研究・講演を手がける。