エンジンまで作っちゃうぞ!自動車メーカーの生死を決めるロボットたち
自動車づくりの現場でロボット導入が活発化している。日産自動車は人が担ってきたパワートレーン(駆動装置)の組み付けなどを置き換えるほか、熟練技能者の技を数値化し自動化する計画。商用車メーカーでは人と一緒に生産ラインに立つ協働ロボットの導入が始まった。「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」と呼ぶ自動車業界の新技術への対応、人手不足といった課題解決をロボットが支援する。
日産はロボット活用による自動化推進などを柱とする自動車工場の生産技術革新「ニッサン・インテリジェント・ファクトリー」を11月に発表した。その最大の特徴は「パワートレーン一括搭載」と呼ぶシステムだ。作業者が専用パレットに各種部品をセットするだけでロボットが1工程で自動で取り付ける。モーター、エンジン、電池、サスペンションで27通りもの組み合わせに対応する。
画像認識技術によってボディーを測定し、0・05ミリメートルの精度で組み付ける。従来、同工程では複数の作業者がきつい姿勢で6回の作業を経て各部品を取り付けていた。ほかにもニッサン・インテリジェント・ファクトリーには、熟練技能者の技を数値化してロボットに教え、手の動きを忠実に再現して自動化するシステムなども盛り込んだ。
自動車は従来のエンジン車に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)が加わり多様化する。自動運転技術などの搭載も進み、機能や構造が複雑化する。効率や品質を維持しながら車づくりを続けるには「従来の労働集約型の大量生産から脱却しないと対応できない。モノづくりも飛躍が必要」と坂本秀行副社長は強調する。
商用車メーカーでも生産現場で協働ロボットの導入が始まった。三菱ふそうトラック・バスとUDトラックスは、それぞれ初めてエンジン組み立てラインで部品の仕分けなどを支援する目的で試験導入を始めた。日野自動車もエンジンの検査工程で協働ロボットを導入した。
商用車各社が協働ロボットの導入に乗り出したのは、人手不足への対応とともに、電動化などの次世代技術に人手を振り向けるのが狙いだ。三菱ふそうのスヴェン・グレーブレ副社長は「簡単な仕事はロボットが手がけ、作業者は複雑な作業に集中させたい」と意図を語る。
商用車も電動化の進展によってモーターやフレーム、アクスル(車軸)といった部品の組み立てなどで生産工程の変化が想定される。単純な作業はロボットに任せ、人は新しい生産技術の構築などに充てたい考え。各社ともに具体的な成果の確認はこれからだが、UDの酒巻孝光社長は「作業者のすぐ近くで安全柵もなく作業ができるので使い勝手が良い」と評価する。日野自は大型トラック部品の生産ラインで協働ロボットの導入を想定する。いすゞ自動車も将来的な導入を検討するなど、各社はロボットの採用拡大も視野に入れる。
【主要5工程で導入が遅れているのは?】
2万―3万点もの部品からなる自動車。品質を確保しながら大量に効率的につくるには、生産現場の自動化が不可欠で、その取り組みはメーカー各社の競争力の源泉になってきた。完成車工場は大きくプレス、溶接、塗装、組み立て、検査の五つの工程で構成する。このうち特に組み立ては自動化率が低く改善余地は大きい。CASEの発展で車づくりが複雑化する中、ロボットによる自動化ソリューションへの需要は高まる。