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54歳の磯野波平さん、現代の設定なら何歳だろうか?

「波平理論」から考える老後
54歳の磯野波平さん、現代の設定なら何歳だろうか?

Image by S. Hermann & F. Richter from Pixabay

 「波平さん理論」をご存じだろうか。1950年頃の東京を舞台にしている漫画『サザエさん』。父親の磯野波平さんの設定年齢は54歳だ。あの風貌や立ち振る舞い、趣味の盆栽など今から見れば「老人」に見えるが、当時のサラリーマンの定年は55歳だから引退間近だ。

 当時の男性の平均寿命は約65歳。「波平理論」を提唱する日銀金融研究所長の関根敏隆さんは「生物学的には現在の74歳に相当する」と、医療の進歩や健康増進などで80歳にまで伸びた現在との違いを指摘する。

 老後の公的年金不足問題など社会保障制度への不安、少子高齢化による労働力不足が社会問題となっている。定年後も健康で働けるうちは働き、受給者が支え手に回れば社会保障制度は維持できるというわけだ。

 妻のフネさんとの老後を楽しみにしている様子の波平さんだが、まだ小学生のカツオとワカメがいる。果たしてどういう選択をしたのだろうか。同じく定年まで1年を切った身としては気になる。

 サザエさん一家のような、サラリーマンと専業主婦家庭を想定した厚生年金制度の原型ができてから60余年になる。令和の今、年金受給開始年齢は逃げ水のように遠ざかり、「老後」は死語になりつつある。嗚呼(ああ)。
日刊工業新聞2019年8月29日(オピニオン)

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