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販売急減の半導体製造装置、それでも投資活発のワケ

DC・5G向け需要、次の波に乗れ!
販売急減の半導体製造装置、それでも投資活発のワケ

日立ハイテクの既存工場(那珂工場)

 半導体製造装置の販売が減少している。この数年間、半導体の顕著な成長にあわせて半導体製造装置の販売を各社とも伸ばしてきた。ただ中国の市況が悪化するなどの影響を受け2019年春以降、不透明感が出てきた。一方でデータセンター向けの投資や第5世代通信(5G)の登場など好材料が控えており、大胆な投資に向かう動きもある。

 日本半導体製造装置協会がまとめた統計によると19年6月度の3カ月平均の日本製半導体製造装置の販売額(速報値)は、前年比23・1%減の1376億円だった。前月比で22・2%減となるなど、短期間で急激に落ち込んでいる。各社の足元の業績も良好とは言いがたい。

 半導体露光装置を販売するキヤノンは、同装置の販売減があるとして19年12月期の営業利益の見通しを7月に再び下方修正した。成長を続けていた国内最大手の東京エレクトロンは、19年4―6月期で営業利益が前年同期比41・2%減の425億円だった。ただ需要減はメモリー半導体向けに限定されている。岡昌志ニコン副社長は「当社はロジック半導体を手がけているので、影響は少ない」と話す。

 販売数量の急激な減少の一方で「それほどメーカーは悲観的になっていない」(日本半導体製造装置協会)という。半導体業界が厳しかった15年以前の状況と比べると、落ち込み幅も少ないもよう。また「取引先の開示を見ると弱含みだが、そう遠くない時期に戻ってくるのではないか」(東京エレクトロン)などと、データセンター投資や5G向けの需要が出てくると考えるメーカーが多い。「20年1―3月には市況が回復するとの見立て」(日本半導体製造装置協会)だ。

 足元の状況とは裏腹に半導体市況の回復と成長を見込み、大型投資をする企業も目立つ。日立ハイテクノロジーズは、約300億円を投じて茨城県ひたちなか市に半導体製造装置と解析装置を生産する新工場を21年に稼働する。桜井真司執行役常務は「(半導体需要の)次の波に乗れるようにする」と意気込む。

 日本企業が自前で増産体制を敷く一方で、世界最大手の米アプライドマテリアルズ(カリフォルニア州)は22億ドル(約2300億円)の大型M&A(合併・買収)を仕掛ける。7月、旧日立国際電気系のKOKUSAI ELECTRIC(東京都千代田区)を買収すると発表、12カ月以内に買収を完了するとした。KOKUSAIの技術力を評価したもので、製品群を増やす狙いがある。

 足元の業績はさえないが、20年以降に需要増が期待できるとの見方が強い。また、その時期に照準を合わせた投資も出ている。半導体メーカーは投資の判断を9月に行うとの声も聞こえている。半導体需要のビッグウェーブに乗り遅れないという気概が各社から伝わってくる。
(取材・石宮由紀子)

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日刊工業新聞2019年8月8日

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