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海洋覇権を狙う中国、監視を強化する先端の防衛技術

海洋覇権を狙う中国、監視を強化する先端の防衛技術

荒天下でも飛べるドローン(三菱重工業が開発)

 尖閣諸島周辺海域で、中国公船の活発な動きが続いている。政府は不測の事態を招かぬよう中国との善隣友好に努める一方で、先端技術を活用した島しょの監視体制を強化すべきだ。

 去る6月11日には中国海軍の空母「遼寧」が護衛艦を従えて宮古海峡を通過、7月には南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で中国軍がミサイル発射訓練を実施した。2020年には遼寧に続く国産空母が就役予定で、カタパルトを備えた3隻目の新型空母も建造中だ。

 幸いなことに目下の日中関係は良好であり、目立った問題にはなっていない。ただ、そうした中でも中国が着々と海洋覇権構想を推進していることには注意が必要だ。

 南西諸島防備強化で防衛省は3月末、沖縄・宮古島と鹿児島・奄美大島に陸上自衛隊の警備隊を置いた。上空からの監視では情報収集衛星の活用や最新鋭の哨戒機「P―1」などがあるが、直線距離で約1200キロメートルに広がる南西諸島の200近い島々をすべて監視するのは困難なのが現実。まして木造船などレーダーに映らない船舶まで含めた監視は不可能といってもいい。

 2010年の海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件は記憶に新しい。日本の防衛体制に緩みが生じれば、地元の住民・企業の経済活動が中国船舶に脅かされかねない。仮に無人島への偽装民間人の不法上陸など不測の事態が起きれば、外交的な努力だけでは解決が困難になる懸念すらある。

 政府としては、常に対話の努力によって日中間のパイプを太くすることが第一だ。これと並行して、隣国を圧迫しすぎない低コストの監視体制を充実させる必要がある。

 防衛省は新防衛大綱や中期防衛力整備計画で、水中ドローン(水中探査ロボット)や無人艇による警備を進める方針を表明している。配備を急ぐべきだろう。すでに国内メーカーは、荒天下でも飛べるドローン(飛行ロボット)や遠隔操作の無人警備システムを開発している。先端技術の活用が待たれる。
水中ドローンは南西諸島防衛にも期待できる(IHIが開発)
日刊工業新聞2019年8月8日

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