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護衛艦の甲板から見えた「富の源泉」

護衛艦の甲板から見えた「富の源泉」

護衛艦「かが」

 富山県高岡市にある伏木港。1899年に外国貿易のための開港場に指定されてから今年で開港120周年を迎えたが、その沿革は古代にまでさかのぼる。

 万葉集の撰者の大伴家持は746年に越中の国守として、この港がある伏木町(現高岡市)に赴任した。その時期の歌にこんな描写がある。「鮪衝くと海人の燭せる漁火のほにか出でなむ我が下思ひを」。漁師が灯す漁火のようにはっきりさせようか―。恋心を明かすかの悩みをこの地で営む漁の様子で表した。

 7月末の記念イベントでは海上自衛隊の最新鋭護衛艦『かが』が伏木港にお目見えした。一般公開で、ヘリコプターなどを収納する格納庫に入った。いずれ空母に改造されれば、ここにF―35戦闘機が並ぶ。

 甲板まで昇降機で上る。機械音を響かせながら、多数の見学者をものともせず運ぶ巨大な昇降機に子どものように興奮した。艦上から港を眺めつつ思いをはせる。古代には漁で、江戸時代には北前船の寄港地として、開港場指定後は日本海側の主要な貿易港として人々を潤してきた歴史に。

 護衛艦から展望した港街の足跡に、島国の日本にとって海が富の源泉であるとあらためて感じた。そして、それを守ることの重要性も。
日刊工業新聞2019年8月2日

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