特別支援学級の生徒こそ「スマホ学習」が必要な理由は?
【連載】進化する幼児教育 第3回 学習アプリ
特別支援学級での実証がスタート
千葉県市川市立新浜小学校の特別支援学級では2019年7月よりタブレットにてファンタムスティックのアプリを授業に導入する実証をスタートした。学年主任の伊勢太惇先生に取組みの経緯と効果について伺った。
―タブレットでのアプリ教育を授業に取り入れるきっかけは。
2018年度ソフトバンクの「魔法のプロジェクト」に応募し、タブレットを2台提供してもらいました。そこで「算数忍者」を見つけ、当時6年生の生徒に使ってもらったところ、すごく計算が嫌いな子だったのにスラスラ解いていたので驚きました。
特別支援学級は興味関心が移りやすい子が多いので、視覚的で素早く勉強できるツールがあれば勉強が効率化できるのではと思っていました。子どもたちが自走していけるのが一番の理想です。自分でやりたいと思ったときに集中できるのがいいなと思ったときにタブレットがいいなと思いました。
―紙の授業とタブレットの授業の違いは。
問題用紙を配って「ここまでできたら教えてね」という方式だと、生徒に「できました!」と言われても「ちょっと待っててね」とすぐに対応できないことが非常に多かったんです。アプリなら問題を解いたときに正誤がすぐわかり、問題が次々に出てくるのでモチベーションが継続しやすいです。
学級にはADHD(注意欠陥多動性障害)傾向の生徒がいます。彼らに対し光や音などの刺激を減らす環境を整備して集中を高めるというアプローチがあるのですが、アプリは結構アニメーションや音の刺激が多いにも関わらず集中して取り組んでいます。アプリの刺激は心地よいようで、刺激がいい方向に働く場合もあるというのがわかりました。興味関心が向いていることに対しては刺激がたくさんあった方がいいのかな、と思っています。
またアプリの中には成績表機能があるので、各生徒の成長を数値で可視化しやすいことも大きな効果です。
―授業にはどのように取り入れていますか。
「ドリルタイム」という時間を設け、授業時間最後の20分間で漢字と計算のアプリをそれぞれ10分間ずつ取り組んでいます。
―効果はいかがですか。
生徒を習熟度別にグループ分けし、プリント学習とアプリ学習の成果を比べてみました。すると全てのグループで回答数が増加していました。特に習熟度が低いグループではその傾向が顕著に現れていました。反復練習が相当効率的にできるというのがわかりました。「やりなさい」という声かけは必要なく、自主的に取り組んでいました。
また書くのにすごく時間がかかり、字も話すのも上手ではない子がいるのですが、漢字アプリに取り組んだところスラスラと解いていて、そこで初めて「理解していたんだ」と知ることができました。アウトプットが苦手だったので、理解できているのかを判断できなかったんです。
―ゲーミフィケーションの効果は。
取り組んでいる子どもたちの声を聞いていると「よっしゃカードゲットした!」「次ボス倒すぞ!」などで、誰も「2+3分かった!」とは言っていないんですよね。ただ楽しみながら自発的に勉強を進められているようです。ステージクリアでゲットできるカードなど、よいタイミングで出てくる報酬は強い動機付けになっています。
―分からなくて先生を呼ぶということはありましたか。
分からなくて、よりも自慢したくて呼ばれました。そこで「カードかっこいいね!」「やるじゃん!次も頑張ってよ!」などとすごく良い声掛けにつながりました。
先生たちの支援の仕方も変わるだろうと注目しています。子どもたちが自主的に進んでいくので先生たちは落ち着いて客観的に子どもたちを見ることができ、適切なタイミングで褒められるようになります。
―保護者からの反応はどうですか。
期待と不安が半々でしたね。子どもが興味を持って取り組めるのではという声が多かったです。逆に心配された点としては、執着の強い傾向がある生徒が多いのでアプリでの学習からの切り替えがスムーズにできるのかがありました。しかし実際授業をやってみるとすんなり終わることができました。授業前に「このタブレットは約束がきちんと守れる人だけが使うことができるものだよ」と話をしてから渡した効果があったようです。
―アプリにもう少し改善してほしい点は。
回答制限時間のカスタマイズができると、できない子とできる子の使い分けができるかなと思いました。
―今後期待することは。
黒板を見て、紙に書いて、という従来の授業の良さもちろんあるのですが、状況に応じていろいろなツールを使えるようにしたいです。今後先生はどう教えるかだけでなく、生徒一人ひとりに合った教材やアプリを選ぶこともできればなと思います。
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