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凋落のデジカメ市場で気を吐くミラーレス、それでも拭えぬ危機感

各社がフルサイズ投入で販売増、スマホ意識しカメラ文化の醸成欠かせず
凋落のデジカメ市場で気を吐くミラーレス、それでも拭えぬ危機感

キヤノンの「EOS RP」

 回復の見通しが立たないデジタルカメラ市場で、ミラーレス(ノンレフレックス)カメラが健闘している。デジカメ市場全体が縮小する中、ミラーレスは出荷額が増加。キヤノンやニコン、パナソニックが35ミリメートルフルサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレスを相次いで発売し、業界全体でラインアップが豊富になったためだ。

 カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、2018年度のデジカメ出荷額は前年度比8%減の約7291億円。このうちミラーレスは、同23%増の約2724億円を記録した。出荷台数はまだ一眼レフカメラが約248万台上回ったものの、一眼レフやコンパクトデジカメなどのレンズ一体型よりも伸びが大きく、デジカメ市場の成長を支える。そのミラーレスの中でも、フルサイズミラーレスが近年の主役だ。

 現在までにフルサイズミラーレスを発売しているのは4社。13年からフルサイズミラーレスに取り組んでいるソニーは、製品の豊富さで先行する。そこにニコンが18年9月、キヤノンが同年10月、パナソニックが19年3月に発売してフルサイズミラーレス市場に参入した。プロのほか、こだわりが強く腕前もあるアマチュア(ハイアマチュア)向けで一眼レフからミラーレスへの本格的な移行が期待されている。

 これらフルサイズのセンサーを搭載するほどの上位機種では、画質の向上に加えて機動力の向上がポイントになる。手ブレ補正やオートフォーカス性能に加え、本体やレンズの小型・軽量化も重要。7月には、シグマ(川崎市麻生区)が世界最小・最軽量で“手のひらサイズ”のフルサイズミラーレスを発表しており、持ち運びやすさの追求が続いている。

 加えて、動画撮影の性能向上もトレンド。4Kや8Kといった高精細な映像ニーズの増加、第5世代通信(5G)の普及を見据えて動いている。

 フルサイズ以外の領域でも、上位機種の開発が進む。富士フイルムは、フルサイズよりもさらに大きい中判サイズのイメージセンサー搭載製品を展開しており、6月に新製品を発売した。高画質と機動力の両立を目指す。マイクロフォーサーズが主力のオリンパスは、システムの小型・軽量化で攻勢をかけている。

 上位機種に沸くミラーレスだが、スマートフォンの影響を危ぶむ状況は他のデジカメと同じ。調査会社のBCN(東京都千代田区)によると、18年のミラーレスの国内シェアはキヤノンが31・6%、オリンパスが23・5%、ソニーが22・7%を占めた。3社とも普及価格帯に人気シリーズを抱える。この価格帯こそスマホとの競争をしてきた。

 業界内ではスマホの普及を好意的に受け取る見方も強い。会員制交流サイト(SNS)や動画投稿サイトの利用者拡大で、質の高い写真・動画撮影に対する消費者の興味がさらに高まっているためだ。

 各社は体験会や撮影講座、展覧会などを積極的に開催して、カメラ文化の醸成にも取り組んでいる。スマホ1台で事足りると考える消費者に対して、デジカメの魅力をどのように訴求するのか、発想力や提案力が問われている。
                

(文=国広伽奈子)
日刊工業新聞2019年7月29日

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