選挙支える企業たち…参院選21日投開票へ準備万端
熱い選挙戦を冷静にサポート―。第25回参院選が4日公示され、21日の投開票まで全国で選挙戦が繰り広げられる。今回は衆議院の解散風が吹きやんだが、衆参同日選挙が行われるとの臆測が長く飛び交っていた。選挙運動や投開票のサポートなど選挙に関わる企業はいつも以上に政局が気になったようだ。突然の解散・総選挙となる衆院選に対し、3年ごとに半数が改選される参院選の方が事業として対応しやすく、今回も準備は万端だ。
イムラ封筒は、封筒事業で国内シェア首位を誇る。窓付き封筒を主力に、書類の封入などを行うメーリングサービス事業も展開し、選挙ビジネスとも深い関わりがある。
1回の国政選挙で同社の封筒関連事業の売上高は約1億円に及ぶ。窓付き封筒の製作と、投票所の入場整理券や地図の封入サービスなどで、各5000万―6000万円ずつを売り上げる。衆参同日選挙だった場合は「一世帯への案内が1回の封筒に集約されるので、利益は少なくなる」(担当者)という。
これまで約20自治体の選挙封筒を扱ってきた。選挙が決まるとすでに地図データがある自治体から営業をかけていくが「1回の選挙で受け入れられるのは5―6自治体まで」(同)という。参院選は時期が決まっているので対応しやすく、今回は5月頃から地図情報の更新など準備をしてきた。
永光自動車工業(千葉市若葉区、木俣博光社長、043・231・8211)は、特種用途自動車(特種車)事業の一環として選挙カーを製造している。千葉工業大学や千葉大学との産学連携で開発したもので、現在6台の選挙カーを所有し、今回の選挙に伴い全台貸し出しとなった。
高性能な音響システムが特徴で、人の声の周波数を分析し、演説などの声を聴衆がうるさく感じず、聞き心地がよいように調整する。また有権者が候補者に親しみやすさ、好感度、安心感を持てるように外装のデザインや色などにも配慮した。
これまで同社の選挙カーを活用した候補者はほぼ当選し、リピート率は100%だ。今後、選挙カーの台数を増やし、将来は20台体制にしたい考えだ。
投票用紙の主原料は木材パルプではなくポリプロピレンだ。折って投票箱に入れると、反発力が強いため箱の中で自然に開く。
投票用紙に使われる合成紙「ユポ」の生産を手がけるのが、ユポ・コーポレーション(東京都千代田区、渡辺真士社長、03・5281・0811)。最初の採用は1983年の統一地方選だったが、用紙が静電気でくっつくといった問題が発生。計数機でのカウントなどがしやすい投票用紙をムサシと共同開発し、89年に導入。即日開票の実現に役立っている。鉛筆でのなめらかな書き味も特徴だ。
同社は選挙ポスター向けのユポも生産している。雨風にさらされても破れたり色つやが落ちたりしない点が好評で、「今ではほとんどのポスターがユポ」(同社)という。最初に採用されたのは72年の衆院選。ユポのポスターを用いた25人の候補者が全員当選したことが人気のきっかけになった。
西尾レントオールは建設機械などのレンタルが主力だが、“総合レンタル業”として選挙関連事業も展開する。選挙時、同社が手がけるのが開票所や候補者事務所の設営だ。
開票所では開票作業に伴う簡易机・椅子などの備品が数多く必要になる。簡易机は西尾レントの西日本エリアだけでも1000台程度ある。候補者の事務所では机や椅子に加えてロッカーや冷蔵庫なども用意する。選挙活動用のグッズとなる拡声器やダルマ、はちまきなどを含めると相当のアイテム数と数量をそろえるのが強みだ。
選挙向け営業に力を入れているRA神戸営業所(神戸市中央区)は、参院選では神戸市内とその近隣で計3カ所の開票所設営を請け負う。小林克哉所長は「今回のような夏場の選挙では、熱中症対策で扇風機やスポットクーラーも必需品になる」と準備にも力が入る。
グローリーは96年に投票用紙分類機を発売し、これまで500以上の自治体が約1100台導入している。投票箱から取り出した用紙を裏表混合で分類機にセットしても装置内で自動的に同じ向きにそろえ、最大64の箱に分類できる。
分類機には文字を読み取るセンサーを内蔵する。事前登録すれば、ひらがなや漢字など文字が違っても同一人物を同じ箱に分類できる。用紙10万枚を30分で候補者別に仕分ける票ぞろえで、手作業だと83人必要なところ、分類機なら11人で済む。最近は「働き方改革の流れによる開票時間短縮や、人員削減で分類機を求める声は多い」と担当者は話す。
投票日まで約2週間。同社では読み取りに必要な立候補者のデータ入力を急ピッチで進めている。開票当日も社員が立ち会い、設備の故障などで作業が滞らないようにする。
綜合警備保障(ALSOK)も選挙を裏側から支えている。候補者の拠点となる選挙事務所は、短期間だけ使用する賃貸物件が多いことから、扉にセンサーを付けて侵入者を検知する機械警備の導入が一般的だ。不法侵入を検知すると警備員が駆けつける。重要な個人情報なども事務所内にあるため、外部からの侵入や窃盗を防止する目的で導入することが多い。
また同社は、都内の区役所から選挙投票所の運営業務の受注実績を持つ。管轄内に約80カ所の投票所があるため、ALSOKが臨時警備にあたっている。
各拠点の地域性を把握する警備員が、会場案内や誘導、交通整理、車椅子利用者の介助など運営をサポート。警備だけではなく、会場の盗聴器や盗撮器の検知にも対応できる。
イムラ封筒の窓付き封筒
イムラ封筒は、封筒事業で国内シェア首位を誇る。窓付き封筒を主力に、書類の封入などを行うメーリングサービス事業も展開し、選挙ビジネスとも深い関わりがある。
1回の国政選挙で同社の封筒関連事業の売上高は約1億円に及ぶ。窓付き封筒の製作と、投票所の入場整理券や地図の封入サービスなどで、各5000万―6000万円ずつを売り上げる。衆参同日選挙だった場合は「一世帯への案内が1回の封筒に集約されるので、利益は少なくなる」(担当者)という。
これまで約20自治体の選挙封筒を扱ってきた。選挙が決まるとすでに地図データがある自治体から営業をかけていくが「1回の選挙で受け入れられるのは5―6自治体まで」(同)という。参院選は時期が決まっているので対応しやすく、今回は5月頃から地図情報の更新など準備をしてきた。
永光自動車工業/演説聞き心地よく 高性能音響を搭載
永光自動車工業(千葉市若葉区、木俣博光社長、043・231・8211)は、特種用途自動車(特種車)事業の一環として選挙カーを製造している。千葉工業大学や千葉大学との産学連携で開発したもので、現在6台の選挙カーを所有し、今回の選挙に伴い全台貸し出しとなった。
高性能な音響システムが特徴で、人の声の周波数を分析し、演説などの声を聴衆がうるさく感じず、聞き心地がよいように調整する。また有権者が候補者に親しみやすさ、好感度、安心感を持てるように外装のデザインや色などにも配慮した。
これまで同社の選挙カーを活用した候補者はほぼ当選し、リピート率は100%だ。今後、選挙カーの台数を増やし、将来は20台体制にしたい考えだ。
ユポ・コーポレーション/強くて“破れない”ポスター
投票用紙の主原料は木材パルプではなくポリプロピレンだ。折って投票箱に入れると、反発力が強いため箱の中で自然に開く。
投票用紙に使われる合成紙「ユポ」の生産を手がけるのが、ユポ・コーポレーション(東京都千代田区、渡辺真士社長、03・5281・0811)。最初の採用は1983年の統一地方選だったが、用紙が静電気でくっつくといった問題が発生。計数機でのカウントなどがしやすい投票用紙をムサシと共同開発し、89年に導入。即日開票の実現に役立っている。鉛筆でのなめらかな書き味も特徴だ。
同社は選挙ポスター向けのユポも生産している。雨風にさらされても破れたり色つやが落ちたりしない点が好評で、「今ではほとんどのポスターがユポ」(同社)という。最初に採用されたのは72年の衆院選。ユポのポスターを用いた25人の候補者が全員当選したことが人気のきっかけになった。
西尾レントオール/設営・備品「丸ごとお任せ」
西尾レントオールは建設機械などのレンタルが主力だが、“総合レンタル業”として選挙関連事業も展開する。選挙時、同社が手がけるのが開票所や候補者事務所の設営だ。
開票所では開票作業に伴う簡易机・椅子などの備品が数多く必要になる。簡易机は西尾レントの西日本エリアだけでも1000台程度ある。候補者の事務所では机や椅子に加えてロッカーや冷蔵庫なども用意する。選挙活動用のグッズとなる拡声器やダルマ、はちまきなどを含めると相当のアイテム数と数量をそろえるのが強みだ。
選挙向け営業に力を入れているRA神戸営業所(神戸市中央区)は、参院選では神戸市内とその近隣で計3カ所の開票所設営を請け負う。小林克哉所長は「今回のような夏場の選挙では、熱中症対策で扇風機やスポットクーラーも必需品になる」と準備にも力が入る。
グローリー/正確・迅速・柔軟に用紙分類
グローリーは96年に投票用紙分類機を発売し、これまで500以上の自治体が約1100台導入している。投票箱から取り出した用紙を裏表混合で分類機にセットしても装置内で自動的に同じ向きにそろえ、最大64の箱に分類できる。
分類機には文字を読み取るセンサーを内蔵する。事前登録すれば、ひらがなや漢字など文字が違っても同一人物を同じ箱に分類できる。用紙10万枚を30分で候補者別に仕分ける票ぞろえで、手作業だと83人必要なところ、分類機なら11人で済む。最近は「働き方改革の流れによる開票時間短縮や、人員削減で分類機を求める声は多い」と担当者は話す。
投票日まで約2週間。同社では読み取りに必要な立候補者のデータ入力を急ピッチで進めている。開票当日も社員が立ち会い、設備の故障などで作業が滞らないようにする。
ALSOK/熱戦見守る警備
綜合警備保障(ALSOK)も選挙を裏側から支えている。候補者の拠点となる選挙事務所は、短期間だけ使用する賃貸物件が多いことから、扉にセンサーを付けて侵入者を検知する機械警備の導入が一般的だ。不法侵入を検知すると警備員が駆けつける。重要な個人情報なども事務所内にあるため、外部からの侵入や窃盗を防止する目的で導入することが多い。
また同社は、都内の区役所から選挙投票所の運営業務の受注実績を持つ。管轄内に約80カ所の投票所があるため、ALSOKが臨時警備にあたっている。
各拠点の地域性を把握する警備員が、会場案内や誘導、交通整理、車椅子利用者の介助など運営をサポート。警備だけではなく、会場の盗聴器や盗撮器の検知にも対応できる。
日刊工業新聞2019年7月5日