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“バズる”要素分析など…テクノロジーが記事書く仕事を変革し始めた

「ライターは質を求め、より深い部分を競うことになる」」
 テクノロジーが記事を書く仕事を変革している。チャットボット(自動応答ソフト)で大多数に取材したり、記事がバズる(ネット拡散)よう構成したりと、コンテンツ制作の費用対効果が改善した。製品のPRや学生生活の紹介など活用は広がっている。(文=小寺貴之)

半自動で骨子


 「米グーグルの広告配信機能が賢くなり、ページと関係ない広告を打てなくなった」とWACUL(ワカル、東京都千代田区)の松尾竜事業開発責任者は漏らす。予算をつぎ込めば広告の露出を確保できたが、広告配信のパーソナライズ機能が進化し「ウェブでお金を出すところがなくなってきている」と指摘する。そのため広告による露出からコンテンツ露出に、戦略を切り替える事業者が増えているという。

 WACULはSEO(検索エンジン最適化)対策を踏まえて、記事構成を作るサービスを始めた。2万8000サイトを分析し、入会や購入などの行動に移る(コンバージョン)確率の高いコンテンツを抽出する。そこから大中小の見出し候補や内容、文字数など、記事の骨子を半自動で作成する。参照ページのコンバージョン率など、記事を執筆する前に見込みが立つのが利点だ。骨子制作が3万円、記事執筆を含め6万円で請け負う。

 メーカーの製品紹介記事では商品の開発コンセプトをそのまま紹介しても読まれるとは限らない。松尾氏は「制作者の熱い思いとウェブコンテンツとしてのパフォーマンスを両立させたい」と話す。

大多数に取材


 リクルートコミュニケーションズ(東京都中央区)は、チャットボットで大多数にインタビューするシステムを開発した。例えば200文字の記事を作る場合、7―10問の質問を重ねて内容を深掘りしていく。

 進学情報サイトの学生生活を紹介するコンテンツでは、進学分野を決めたきっかけや、印象的なエピソード、学校の自慢ポイントなど、内容を段階的に掘り下げる。回答文字数や例文を示し、散漫にならないように誘導する。

 同社の小林琴乃マネージャーは「対面取材のプレッシャーがなく、生の声を引き出せている」と手応えは大きいようだ。寝る前や通学時間に回答している学生が多く、取材時間や場所の制約もない。長い原稿は時間を分けて聞きだし、整理していくことが可能だ。

 将来は毎晩チャットボットの問いに答えていると、自伝ができるようになるかもしれない。小林氏は「量や数をそろえるコンテンツはシステム化できる。ライターは質を求め、より深い部分を競うことになる」と展望する。

早くても不利?


 課題は記事が“バズって”コンテンツとして確立すると、同じ切り口の原稿があふれる点だ。後発の方が費用対効果が高く、自費で取材する先行者利益は少ない。以前は媒体や書き手への信頼として評価されたが、SEOの進化によってその価値観は変わりつつある。

チャットボット取材のイメージ(リクルートコミュニケーションズ提供)
日刊工業新聞2019年6月14日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
 ライターが付加価値を生み出すには企画や質問設計などの、より上流の工程に踏み込んでいく必要があるように思います。企画を作る人以外が外注されているとライターが発注元に忖度して、現場と企画者の肌感覚が合わなくなっていきます。社内であっても上下関係が厳しいと、現場と企画に齟齬が起こりえます。そんな状況になってからSEOなどのテクノロジーに頼ると、どんなコンテンツが量産されるのかと思います。ニュースよりフェイクニュースの方が費用対効果がいいという現実もあり、モラルを失えばキュレーションサイトであったような騒動になりかねません。このあたりが現在のライターという職業人の言い分になると思います。  こうしたテクノロジーの使い方に忌避感を覚えるジャーナリストは少なからずいます。AIに仕事を奪われるというコンテンツにさらされてきた人の気持ちを考える機会になるはずです。AI導入は定型業務や分析支援から始まります。そこにジャーナリストとしての創造性はないのかもしれませんが、自分のやってきた苦労が次の世代ではシステム化や外注の対象になります。  そしてコンテンツ制作としては後発の方が効率がいいです。当たったコンテンツをもとにデザインでき、読者や視聴者が飽き始めているかデータがとれるようになっています。何より世の中の多様な専門家が自ら発信するようになりました。ライターはコンテンツの新しさでも深さでも難しい状況にあります。将来は、高い専門性をもった個人がテクノロジーを駆使して一人一人に刺さるコンテンツを量産するようになるのでしょうか。次の時代のライターが育つ場所は旧来型のメディアではないのかもしれません。

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