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優良と思われた太陽光発電システム会社が倒産、「身の丈」を超えたリスク経営

パシフイック・コースト・インダストリー、「ID取引」で大損失
 太陽光発電システム事業を展開するパシフイック・コースト・インダストリー(PCI社)は、日本中が祝賀ムードに包まれた令和元年5月1日、同業者に事業を譲渡した上でGW明けの8日に破産を申し立てた。

 PCI社の設立は1990年12月。内装工事からスタートし住宅用ソーラーパネル、産業用メガソーラー発電施設のパネル設置工事へと業容を拡大させた。ピーク時の2016年6月期には年売上高約32億7100万円まで伸ばし直近決算まで黒字を維持し続けた。

 しかし、順調に事業を展開していたPCI社を18年に二つの“災難”が襲った。一つは太陽光発電施設にかかる土地付き権利取引(いわゆるID取引)。発注者がIDを購入した茨城県の工事現場について、他社へ二重譲渡されていたことが発覚。3億円強の金額を受け取れるはずが、大きな損失を被った。

 さらに追い打ちをかけたのが、西日本に猛威を振るった「平成30年7月豪雨」。PCI社が7億円強で請け負っていた、岐阜県の工事現場を豪雨が襲った。現場一帯が流され、造成工事のやり直しの必要が生じたのだ。

 これらに伴い、資金流出が重なり18年末頃から資金繰りに窮していた。このため19年2月上旬頃から事業譲渡先の選定に着手。3月にようやく既存取引先の同業者が名乗りを上げ、5月1日の譲渡実行にこぎ着けた。全事業廃止という最悪の事態だけは回避された。

 得意先からの評価も高く、1万2000件超の施工実績を誇るPCI社がなぜ破産したのか。一言でいえばリスクを取り過ぎた。メガソーラー事業参入の11年以降、売り上げを伸ばした半面、設備購入等に伴う借入金も増加した。

 内部留保を蓄積してはいたが、純資産額は2億800万円(18年6月期末)。億単位の現場を複数抱える企業にしては盤石とはいえない水準だ。令和初の大型倒産は「身の丈経営」の難しさを考えさせる事例となった。
(文=帝国データバンク情報部)
<企業概要>
(株)パシフイック・コースト・インダストリー
住所:神奈川県川崎市川崎区富士見1―7―16
代表:高田浩史氏
資本金:2000万円
年売上高:約23億5600万円(18年6月期)
負債:約31億7397万円
日刊工業新聞2019年6月4日

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