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50年間でネーム印累計1億8000万本。紙でもデジタルでもシヤチハタでポン

50年間でネーム印累計1億8000万本。紙でもデジタルでもシヤチハタでポン

シヤチハタの認知度を高めたインク浸透印「ネーム9」

 はんこなどの浸透印の製造を行うシヤチハタは1925年に繰り返し使えるスタンプ台「万年スタンプ台」を開発し、舟橋商会として創業した。現在では事務用に繰り返し使うはんこや文房具店などで販売されているネーム印などが主力。今後は、はんこを守りつつ、ペーパーレス化に対応したパソコン上ではんこが押せるソフトウエアの販売も強化する。

補充不要


 万年スタンプ台を開発した当時はスタンプ台にインキを毎回補充して使っており、補充せずに連続して使える商品は画期的ではんこ屋で販売されたり、郵便局や銀行などで使用された。

 スタンプ台の流通に成功した後、仕事の効率を上げる商品を作りたいという思いで、スタンプ台にはんこを載せなくてもはんこを押すことができるインキ浸透印を68年に発売。大阪万博でもシヤチハタのインキ浸透印のスタンプを置いたこともあり認知度が上がった。舟橋正剛社長は「50年間でネーム印の一部商品だけで累計1億8000万本ほど販売した」と話す。

海外に進出


 またシヤチハタでは浸透印以外でもマーカーなどの文房具「アートライン」を54年から製造し、海外展開を推進。マーカーは国内より海外のほうが市場がありさまざまな国への輸出を行う。豪州ではたいていの文具店でアートラインが入っているほどだが海外ではんことしての認知度は低い。今まで海外では別注で作るはんこの製造は設備的に困難であったが、簡単にできる機械の開発ができた。舟橋社長は「今後は海外のはんこ店に設備を売り込み、国内でのシヤチハタ=はんこのイメージを海外にも広げていきたい」と意気込む。

 国内ではペーパーレス化などが進み、書類などもデジタル化していく。「今後長い目でみるとはんこの数は減っていき、影響は多少出る可能性がある」と舟橋社長は考える。

スマホ向け開発


 25年前からパソコン上ではんこを押せるソフトウエアの開発を行い、販売してきた。3年ほど前にはクラウド上にはんこなどのデータをあげ、パソコン上だけでなく、スマートフォンなどでもはんこを押せるソフトの開発をし、販売をした。「ソフトを100万ユーザーに使ってもらい、デジタルでのはんこ認証もシヤチハタを選択してもらえるようにするのが目標」。既存の商品も守りつつ世の中の流れに対応した製品の販売も強化し、はんこ市場のスタンダードを作っていく。(名古屋・岩崎左恵)
舟橋社長


【企業プロフィル】
▽所在地=名古屋市西区天塚町4の69▽売上高=176億円(18年3月末単体)▽設立=41年(昭16)9月
日刊工業新聞2019年5月27日

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