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ゲッティイメージズジャパン社長が語る、広告の固定観念とジェンダー問題

企業はジェンダー問題にどのように向かい合うべきか
ゲッティイメージズジャパン社長が語る、広告の固定観念とジェンダー問題

ゲッティイメージズジャパン社長 島本久美子氏

 米写真配信大手のゲッティイメージズは、3月からダヴ(ユニリーバのブランド)、クリエーティブ集団のGirlgazeと共同で、多様な女性の姿を撮影した写真を提供するプロジェクト「#ShowUs」を始めた。ゲッティイメージズジャパンの島本久美子社長に、企業がどうジェンダー問題に取り組むべきかについて聞いた。

―「#ShowUs」プロジェクトとは。

 「ありのままの女性の姿を表現した写真をメディア・広告主に提供することで、美の固定概念を打ち破ることを目指している。写真は、39カ国から116人の女性もしくは(どちらの性別にも帰属しない)ノンバイナリージェンダーのフォトグラファーによって撮影されたもの。立ち上げ時は写真数5000点のライブラリーだが、今後増やしていく」

―その経緯は。

 「当社は7年前から、非営利組織LeanIn.Orgと共同で、多様な女性像をコンテンツとして提供してきた。今回の#ShowUsでは『女性に自信をもって暮らしてほしい』というダヴと当社の思いが合致した」

―女性の姿に対する固定概念を取り払いたいということですね。

 「加工修正された非現実的な体形のモデルを写したメディア・広告を子どもの頃から見ていると、知らないうちに価値観の形成のなかで自分自身のあり方を制約してしまう。実際、ダヴの調査によると、女性の70%は広告などで日々目にする女性の画像に不満を感じている。メディア・広告主はその責任を自覚してビジュアル選びをしてほしい」

―一般の人を広告に使うのはどうかという声もあります。

 「今の時代、多くの企業が目指すのは、親近感のあるブランド。『完璧』なビジュアルの女性を広告に使ったところで、果たして親しみのあるブランドになるのか。ここ数年、ソーシャルメディアやスマホの普及もあり、スナップ写真を広告で使うというトレンドが続いている」

―社員に対する取り組みも重要です。

 「よく言われるのが、ダイバーシティー&インクルージョン。ダイバーシティーとは、女性役員を何人にするかなど数量化できるもの。一方、インクルージョンは、多様な人々をどう受け入れ、彼らがどう感じるかという感覚的なこと。ダイバーシティーよりも達成するのは難しいが、より重要。日本の企業ではいかに女性管理職を増やすかという狭い範囲で見ているケースが多いが、男女とも気持ちよく働ける職場をつくっていくという観点が重要だ」

―社内でジェンダー平等が広まらない背景には、女性社員側の意識にも問題がありそうです。

 「女性は男性と比べ、キャリア志向をアピールする人が少ない。キャリアを積むこと自体を最初から諦めている人もいれば、実際キャリア志向があっても隠す人もいる。キャリア志向があるなら、積極的に自分より上のポジションの仕事で成果を出すなどして、アピールしていくべきだ」
(文=張谷京子)
日刊工業新聞2019年5月3日

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