電力データは新たなビジネスを生み出すか
東京電力パワーグリッドやNTTデータなどがラボ創設
東京電力パワーグリッドやNTTデータなどが、スマートメーター(通信機能付き電力量計)のデータを活用する「グリッドデータバンク・ラボ」を立ち上げた。電力データという広域にまたがるビッグデータ(大量データ)を活用し新事業を創出するのが目的だ。さまざまな企業がデジタルを活用した新事業開拓を模索する中、電力各社もデータを活用したプラットフォームの構築に乗り出した。
電力データの活用は電力のピークバランスの情報を取得し、需給を調整するスマートグリッド(次世代電力網)が周知のものとなっている。8年前の東日本大震災の影響により原子力発電所が停止し、電力供給能力が低下した。自然エネルギー利用の流れとも相まって脚光を浴び、大規模な発電所から電力を供給するのではなく、複数の供給拠点から需要に応じた分だけを提供するスマートグリッドが盛り上がりをみせた。
スマートグリッドの実現に不可欠なインフラがスマートメーターだ。通信機能を内蔵した電力メーターで工場やオフィス、家庭などでの電気の使用状況が分かる。リアルタイムの使用状況を把握できるため検針の必要もない。今回、東京電力パワーグリッドやNTTデータ、関西電力、中部電力の4社が設置したグリッドデータバンク・ラボの最大の特徴は、このスマートメーターのデータを活用した新事業の創出にある。電力の需給を把握するという次元から、地域性も異なるケタ違いのビッグデータを扱うことになる。
同ラボ立ち上げに関する発表会で、4社の責任者は電力データ活用の意義を強調した。利用事例として挙げたのが防災計画の向上だ。地図上に電力データを組み合わせることで30分ごとの利用状況が見える化できる。都内のある地域を縦横250メートルで区切り、スマートメーターから推定して在宅世帯数を表示する。時間帯により人の活動がどこにあるのか把握できる。これを自然災害が発生した際に応用する。自治体には避難所が設定されているが、避難所にはキャパシティーがあり、在宅者が多い場合は災害時に避難所の容量を超える場合もある。避難ルートの変更や補給物資をいつ、どこに、どれくらい運ぶべきか詳細な避難計画のプランニングに役立つ。
エリアマーケティングも想定されるユースケースの一つだ。飲食店やコンビニなど新たな店舗の出店先を探す場合に活用できる。スマートメーターのデータを地図上に落とし込む。縦横1キロメートルごとの世帯の数を表示し、過去の電力データと比べ世帯数が増加しているエリアをプロファイルできる。
同ラボは3年間の活動のうち18年、19年はユースケースの創出に取り組む。1件のユースケースにつき3カ月程度を割く予定だ。2年間で最大限多くの実証に取り組む。東京電力パワーグリッド事業開発室部長で同ラボ業務執行責任者の平井崇夫氏は「会員企業と共同で実証活動を進め、データ活用のアイデアを具体化している。電力データを活用した有益なユースケースを集める」と語る。
同ラボは4社のほか、参画企業として自治体や損害保険会社、電力会社、銀行などの企業が名を連ねる。電力データをプラットフォームとして整備し、他業種の企業が持つデータと組み合わせ新たな事業や市場を創出することも見込む。
デジタル化の波はとどまるところを知らない。さまざまな産業でデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)が加速している。その中でも、データは“21世紀の石油”とも言われる。この天然資源をどう新たな価値や市場の開拓に結び付けるのか、資源を扱う電力会社の真価が問われる。
電力データの活用は電力のピークバランスの情報を取得し、需給を調整するスマートグリッド(次世代電力網)が周知のものとなっている。8年前の東日本大震災の影響により原子力発電所が停止し、電力供給能力が低下した。自然エネルギー利用の流れとも相まって脚光を浴び、大規模な発電所から電力を供給するのではなく、複数の供給拠点から需要に応じた分だけを提供するスマートグリッドが盛り上がりをみせた。
リアルタイムで
スマートグリッドの実現に不可欠なインフラがスマートメーターだ。通信機能を内蔵した電力メーターで工場やオフィス、家庭などでの電気の使用状況が分かる。リアルタイムの使用状況を把握できるため検針の必要もない。今回、東京電力パワーグリッドやNTTデータ、関西電力、中部電力の4社が設置したグリッドデータバンク・ラボの最大の特徴は、このスマートメーターのデータを活用した新事業の創出にある。電力の需給を把握するという次元から、地域性も異なるケタ違いのビッグデータを扱うことになる。
同ラボ立ち上げに関する発表会で、4社の責任者は電力データ活用の意義を強調した。利用事例として挙げたのが防災計画の向上だ。地図上に電力データを組み合わせることで30分ごとの利用状況が見える化できる。都内のある地域を縦横250メートルで区切り、スマートメーターから推定して在宅世帯数を表示する。時間帯により人の活動がどこにあるのか把握できる。これを自然災害が発生した際に応用する。自治体には避難所が設定されているが、避難所にはキャパシティーがあり、在宅者が多い場合は災害時に避難所の容量を超える場合もある。避難ルートの変更や補給物資をいつ、どこに、どれくらい運ぶべきか詳細な避難計画のプランニングに役立つ。
エリアマーケティングも想定されるユースケースの一つだ。飲食店やコンビニなど新たな店舗の出店先を探す場合に活用できる。スマートメーターのデータを地図上に落とし込む。縦横1キロメートルごとの世帯の数を表示し、過去の電力データと比べ世帯数が増加しているエリアをプロファイルできる。
アイデア具体化
同ラボは3年間の活動のうち18年、19年はユースケースの創出に取り組む。1件のユースケースにつき3カ月程度を割く予定だ。2年間で最大限多くの実証に取り組む。東京電力パワーグリッド事業開発室部長で同ラボ業務執行責任者の平井崇夫氏は「会員企業と共同で実証活動を進め、データ活用のアイデアを具体化している。電力データを活用した有益なユースケースを集める」と語る。
同ラボは4社のほか、参画企業として自治体や損害保険会社、電力会社、銀行などの企業が名を連ねる。電力データをプラットフォームとして整備し、他業種の企業が持つデータと組み合わせ新たな事業や市場を創出することも見込む。
デジタル化の波はとどまるところを知らない。さまざまな産業でデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)が加速している。その中でも、データは“21世紀の石油”とも言われる。この天然資源をどう新たな価値や市場の開拓に結び付けるのか、資源を扱う電力会社の真価が問われる。
日刊工業新聞2019年3月26日