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オフィスビルにコーヒー配達ロボ

森トラストが都内で運用実験を開始
オフィスビルにコーヒー配達ロボ

商談中の客に、自律走行型配送ロボットがコーヒーを届ける

 森トラストはオフィスビル「城山トラストタワー」(東京都港区)で、米サビオーク(カリフォルニア州)が開発した自律走行型配送ロボット「Relay(リレイ)」の運用実験を始めた。30―37階に入居するテナント企業や1階エリアの商談客に、子会社が運営するカフェからコーヒーを配達する。森トラストは2018年9月にサビオークへ出資した。約半年の実証実験と検証の後、配膳ロボを他のビルにも展開し、他の大手デベロッパーとの差別化につなげる考えだ。

異なる階にも


 リレイの寸法は直径51センチメートル、高さ92センチメートルで、上部にふた付き格納スペースを持つ。自走して目的地に着くと「客がパスワードを使ってロック解除し、中身を取り出す仕組み」と、同ビルを運営する森トラスト・ビルマネジメント(同港区)経営企画室の鈴木良広氏は説明する。米国ではホテルを中心に100台以上の納入実績があるという。

 他の配膳ロボとの違いは、ビルのエレベーターシステムと連動し、階が異なっても配達が行えること。例えば1階のカフェから、上層階のテナント企業に飲み物や食事を届けられる。実験では、ショーケース・ギグ(同港区)のモバイル式注文、支払いプラットフォーム(基盤)「オーダー」を組み合わせる。「オフィスからスマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)で注文から決済まで行え、1階までわざわざ降りる必要がない」と、ショーケース・ギグのマーケティング・PRグループ高堂和芽さんは“手間いらず”を強調する。

新ビル導入計画


 実験で使うリレイは1台で、親しみやすいようシンボルカラーの青色と犬の絵柄をつけた。森トラストによると、今のところセンサーマッピングによる自走や、エレベーターを介した複数階の移動はほぼ問題ない。だが、30階と32階の企業にそれぞれコーヒーを配達するような場合、誤配達対策のため、いちど1階へ戻る必要がある、という課題がある。エレベーターの混雑時も、ロボが中へ乗れないケースもある。

 実験で出た問題点を一つずつ解決して、同ビル全体への導入や他のビルへの展開にもつなげる考えだ。同ビル近くの東京メトロ神谷町駅直結で20年春に完成する「東京ワールドゲート」にも導入を計画する。加えてロボの機種についても、サビオークに出資する利点を生かし「清掃ロボットや道案内ロボット、警備ロボットなども開発していきたい」(森トラストイノベーション戦略室の木原圭一専門部長代理)という。

先進性PR


 森トラストはカフェやホテル運営の子会社を通じて、ロボを展開する構想も持つ。外食やホテルはどちらも人手不足問題が深刻で「コーヒーサーバーロボや調理ロボを開発すれば、解決策になる」(同)とみる。東京五輪・パラリンピックでは大勢の訪日客が予想される。ロボ導入の先進性をPRし、自社ビルの差別化手段とする考えだ。
(文=編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞2019年1月25日

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