廃校の運動場がイチゴ農園に!クボタのユニークな地方活性化
農業の経営課題解決へ、全国に実証ファーム展開
**閉校の運動場
閉校の運動場をイチゴ園に―。クボタが、トータルソリューション提案で、日本国内の農業が抱える経営課題解決に向けた取り組みを推進している。農業機械トップメーカーとしての総合力を生かし、全国13カ所で実証ファーム「クボタファーム」を展開する。中でもユニークな取り組みは、香川県三豊市で閉校となった小学校の運動場を活用するイチゴ園だ。
日本の農業の課題について、クボタアグリソリューション推進部の邑本(むらもと)勝史生産振興グループ長は「高齢化・就業者減による人手不足、所得確保の難しさ」と指摘する。
2013年に立ち上げたクボタファームは、農業機械販売の枠を超えて、農業者の利益確保や多角化など選択肢の増加を支援する。地域や農地に合った農産物を手がけるクボタファームだが、三豊では香川県内で多くつくられるイチゴにスポットが当てられた。
三豊では地元自治体からの声かけもあり、統廃合による旧小学校の運動場をイチゴ園に転用した。同グループ長は「三豊のケースは農地を使わず農家対象でもなく、クボタファームの中で少し不思議な位置付けとなったが、地域活性化の一環で取り組んでいる」と説明する。
三豊市内の旧小学校の運動場を三豊市から賃借し、約2800平方メートルのハウス施設を16年9月に完成させたのが「がっこうのイチゴ園 財田上(さいたかみ)」だ。グループ会社の中四国クボタ(岡山市東区)が運営する。同月から香川県の登録品種「さぬきひめ」を初栽培し、同年12月から出荷した。
収穫するイチゴは、11―12月は香川県内のレストランなど向けに出荷。年明けから春までは、観光農園としても併用している。入園料は、中学生以上の一般が1800円、子どもが1500円(3歳未満は無料、いずれも消費税抜き)で、40分間イチゴが食べ放題。「地元の方を中心に喜んでもらっている」と同グループ長は手応えを語る。18年12月26日から始まった今季の観光農園は、前季から3000人増の約1万人の来場を見込む。
同グループ長は3年目を迎えたイチゴ園について「天候の変動に影響される面はあるが、イチゴ栽培の仕方もまだまだ工夫できる」と話す。農業者に対しても、イチゴ栽培の運営ノウハウを伝授する機会を探る。その上で、農機以外に「当社が手がける農業用エアコンなど、関連設備機器の単品販売も拡大していきたい」(同グループ長)という。
クボタファームの取り組みは、収益や労働環境の改善を含めて、担い手農家が将来的に事業継続できる提案が主眼となる。ただ、イチゴ園を観光ルートに組み込んだ団体旅行を販売する旅行会社など、クボタにとっても新たな接点の開拓につながる利点もありそうだ。
(文=大阪編集委員・林武志)
閉校の運動場をイチゴ園に―。クボタが、トータルソリューション提案で、日本国内の農業が抱える経営課題解決に向けた取り組みを推進している。農業機械トップメーカーとしての総合力を生かし、全国13カ所で実証ファーム「クボタファーム」を展開する。中でもユニークな取り組みは、香川県三豊市で閉校となった小学校の運動場を活用するイチゴ園だ。
日本の農業の課題について、クボタアグリソリューション推進部の邑本(むらもと)勝史生産振興グループ長は「高齢化・就業者減による人手不足、所得確保の難しさ」と指摘する。
2013年に立ち上げたクボタファームは、農業機械販売の枠を超えて、農業者の利益確保や多角化など選択肢の増加を支援する。地域や農地に合った農産物を手がけるクボタファームだが、三豊では香川県内で多くつくられるイチゴにスポットが当てられた。
三豊では地元自治体からの声かけもあり、統廃合による旧小学校の運動場をイチゴ園に転用した。同グループ長は「三豊のケースは農地を使わず農家対象でもなく、クボタファームの中で少し不思議な位置付けとなったが、地域活性化の一環で取り組んでいる」と説明する。
さぬきひめ出荷
三豊市内の旧小学校の運動場を三豊市から賃借し、約2800平方メートルのハウス施設を16年9月に完成させたのが「がっこうのイチゴ園 財田上(さいたかみ)」だ。グループ会社の中四国クボタ(岡山市東区)が運営する。同月から香川県の登録品種「さぬきひめ」を初栽培し、同年12月から出荷した。
収穫するイチゴは、11―12月は香川県内のレストランなど向けに出荷。年明けから春までは、観光農園としても併用している。入園料は、中学生以上の一般が1800円、子どもが1500円(3歳未満は無料、いずれも消費税抜き)で、40分間イチゴが食べ放題。「地元の方を中心に喜んでもらっている」と同グループ長は手応えを語る。18年12月26日から始まった今季の観光農園は、前季から3000人増の約1万人の来場を見込む。
新たな接点開拓
同グループ長は3年目を迎えたイチゴ園について「天候の変動に影響される面はあるが、イチゴ栽培の仕方もまだまだ工夫できる」と話す。農業者に対しても、イチゴ栽培の運営ノウハウを伝授する機会を探る。その上で、農機以外に「当社が手がける農業用エアコンなど、関連設備機器の単品販売も拡大していきたい」(同グループ長)という。
クボタファームの取り組みは、収益や労働環境の改善を含めて、担い手農家が将来的に事業継続できる提案が主眼となる。ただ、イチゴ園を観光ルートに組み込んだ団体旅行を販売する旅行会社など、クボタにとっても新たな接点の開拓につながる利点もありそうだ。
(文=大阪編集委員・林武志)
日刊工業新聞2019年1月11日