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仕事はできないけれど…脚光浴びる“癒し系ロボ”の数々

人に寄り添い、安らぎを
仕事はできないけれど…脚光浴びる“癒し系ロボ”の数々

眠りを誘うパルスボッツの癒やしロボット

 サービスロボット分野で“癒やし系のロボット”が、存在感を増している。自動車や家電製品工場の製造ロボットのように、高速・高精度で作業を行えるわけではない。清掃ロボットや警備ロボットのような“仕事”もできない。だけど、ペットのように、そばにいてくれるだけで人間の心が温まる存在―。震災や大規模水害、高齢化社会などで“人の絆”の大切さが叫ばれる中、ロボットの世界でもこうした新しいロボットが注目を集めそうだ。

家族型


 2018年12月に、GROOVE X(東京都中央区)がウェブ予約の受け付けを開始した家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」。このロボットは清掃ロボット「ルンバ」のように、清掃の仕事はしない。高さ43センチメートルで各種のセンサー類や半天球カメラ、人工知能(AI)のプラットフォームを搭載、ペットの犬猫のようにかわいがってくれる人に懐いたり、側に寄ってきたりする。服を着せたり、抱っこしたりするとさらにポイントが上がり、名前を呼ぶとついてくる。

 「ロボット技術は日々進歩しているが、人間の仕事が奪われることに不安を抱く人々も多い。IoT(モノのインターネット)の見守りサービスがなかなか普及しないのは、人とロボットの間に信頼関係が構築されていないためではないか」と林要社長は問いかける。高精度サーボモーターや画像認識、AIなどによって、ロボットが製造現場の重労働を代替したり、作業スピードを向上したりしたのは確かだが、無機質な労働者と機械の関係にある意味での反省も生まれている。

「らぼっとはパートナー」と語るGROOVE Xの林社長

 手塚治虫の「鉄腕アトム」や「火の鳥」などの作品ではロボットが人間に恋をしたり、友人関係を築いたりする話が出てくる。家族ロボットのLOVOTが開発でこだわったのは、アイディスプレー。瞳は6層のレイヤー構造で泣き顔や笑顔、すねた顔など、豊かな感情表現を実現した。タッチセンサーなどで体の触れられ方や声かけの違いなどを認識し、特定の人に懐くようになるという。

愛らしい存在


 ユカイ工学(東京都新宿区)や、パルスボッツ(同目黒区)のロボットも、特に仕事はしない。パルスボッツの睡眠サポートロボット「ネモフ」は球体をした白色と黒色のぬいぐるみで、会話やオルゴールなどの独自の癒やし系コンテンツを搭載し、寝床でなでると今の時刻を“ムニャムニャ口調”で伝えたり、眠気を誘うオリジナルの物語を語ったりする。「スマートフォンで目を酷使する20―30代の女性に売り込みたい」と美馬直輝社長は語る。ユカイ工学のクッション型セラピーロボット「Qoobo(クーボ)」は猫や犬のような“しっぽ”が特徴で、なでると上下や左右方向に動く。

ロボに生命


 高度技術社会推進協会(TEPIA)が18年12月に行った18年のロボットグランプリでは、長野県立松本工業高等学校の「男子高校生の夢 萌えロボット『モエちゃん』」が、グランプリ賞を獲得した。妹やメイドさんのような女子高校生が側にいてくれたら、という男子高校生の“切実な欲望”に応え、瞳の表情やかわいらしい声にこだわった。「ロボットに対する定義が、今までとは変わってきている。ロボットに生命を感じたい」と開発した生徒たちは語る。

 人手不足や高齢化を背景に省力化ロボットの需要が伸びる一方、心の安らぎや癒やしを求めるロボットの需要も高まりつつある。ロボットは犬猫のペットと違って毛やトイレの始末もなく、赤ちゃんのようにぐずったり高熱を出したりすることもない。そんな手間いらずの特性も、商品ヒットに一役買っているようだ。

ユカイ工学のクーボは、なでるとしっぽがフサフサ動く癒やし系だ

(文・嶋田歩)
日刊工業新聞2019年1月8日

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