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念願の研究開発力強化法改正、ベンチャー出資解禁で国研にチャンスも

理研は新法人を2019年4月にも設立
念願の研究開発力強化法改正、ベンチャー出資解禁で国研にチャンスも

国立研究開発法人イノベーション戦略会議で改正法への期待を語る各国研の理事長

 出入国管理法改正で揺れた臨時国会では日本の科学技術の行方を左右する法案も通過した。8日の午前2時に研究開発力強化法の改正案が参議院本会議で可決され成立した。22の国立研究開発法人にベンチャーなどへの直接出資の道が開かれた。国研は研究開発に加え、事業化を支援して投資を回収できるようになる。

 研究開発力強化法は科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(科技イノベ活性化法)に改名され国研による出資が解禁される。これを受け理化学研究所は研究成果を活用する事業や理研発ベンチャーなどに出資する事業会社「理研イノベーション事業法人」を早ければ2019年4月に設立する。

 理研内に人員体制はできており、政令の整備や理研事業計画の修正、新会社出資への文科相認可などの手続きを進めている。新会社の報酬など人事制度も最終調整段階だ。理研は構想段階を含めて法改正を1年以上待っていた。松本紘理事長は「念願の法改正。会社設立に向け最短で進める」と力を込める。

 農業・食品産業技術総合研究機構もチャンスを見いだす。久間和生理事長は「研究を社会に届けるための選択肢が広がった」と期待する。これまで農研機構は品種改良や栽培法の開発など農業への貢献が主だったが食品産業に目を向けると巨大な市場が広がる。「米粉パン用の米の品種開発は小麦アレルギーの子どもを救える。世界市場は大きい」と職員に発想の転換を促す。

 出資を通して研究成果からの収益を回収できるようになると、国研は自らで使い道を決められる自己収入が増える。国からの運営費交付金や企業との共同研究費などは使用目的が決まっている。国研の組織改革や戦略投資を進めたければ、年度ごとの予算編成を経て政策として実現する必要があった。物質・材料研究機構の橋本和仁理事長は「次は給与の実質的制限の問題。自己収入で優秀な人材を迎える場合は別枠として制限を緩和して頂きたい」と要望する。
(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2018年12月21日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
間接的ではありますが、国立研究開発法人が事業化にも手を広げるメリットは大きいと思います。国の技術開発戦略を構想する頭脳集団が事業化もリードできることになります。大学だと先生個人に成果や権利が帰着しがちですが、国研なら企業と組織対組織で契約し運用することにたけています。極論すると規制省庁の研究所で、自分で技術的なルールを作り、そこに技術を供給することも不可能でないように思います。国内市場でのマッチポンプはさすがに認められないと思いますが、オールジャパンで海外市場を開拓していく際には、要となる部分に国研発ベンチャーが座ることが増えると思います。国としては国策が成功するとリターンが期待できます。成功したら国研発ベンチャーを分割して産業界が吸収すればいいので、参加各社で成果配分を調整して国研とジョイントベンチャーを作る例も増えると思います。

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