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シャープも鴻海も業績低迷、再び構造改革?

電子デバイス事業の分社化
シャープも鴻海も業績低迷、再び構造改革?

戴正呉会長兼社長

 シャープの戴正呉会長兼社長は26日、電子部品事業の成長に向け、資本提携を含め他社との連携を加速する方針を示した。同日、IoT(モノのインターネット)やフルハイビジョンの16倍の解像度を持つ「8K」に欠かせない電子部品の事業を2社に再編し、2019年4月に分社化すると発表した。戴会長兼社長は堺市堺区の本社で記者団に「国内外の企業と連携を考えている」と話した。

 同社は1990年代末から、液晶パネルと太陽電池に投資を集中した。今後はIoTなどの普及が進み、レーザーや電子デバイスといった半導体技術が欠かせない分野が成長のけん引役になると判断した。

 電子部品事業は20年近く投資を控えており、開発や製造の経営資源が乏しい。そこで分社し、経営判断や協業を迅速に進められるようにする。

 まず、自社の8K液晶テレビに使う画像処理半導体などを改良するため、親会社の台湾・鴻海精密工業を含め提携を模索する。

日刊工業新聞2018年12月27日



次の柱は?


 シャープは経営不振から完全復活を目指し、正念場を迎えている。2016年8月に台湾・鴻海精密工業の傘下に入り、販売と調達の力を借りて液晶テレビや太陽電池の事業を立て直した。だが、今後は、こうした鴻海依存からの脱却が求められている。

 「想定を超えるブランド力の低下を招いた」と、シャープの戴正呉会長兼社長は反省する。鴻海はシャープの液晶テレビ事業をテコ入れするため、17年度に中国で鴻海が持つ販売網を使い、シャープのテレビを安値で売りさばいた。結果、シャープ製品に安物のイメージが定着した。鴻海はシャープのブランドを生かし、韓国サムスン電子などに対抗するメーカーへ飛躍する構想を描く。だが、シャープの経営再建を急ぐあまり、そのブランドを傷つけた。

 業績にも陰りが見える。シャープの18年7―9月の売上高と営業利益は前年同期を下回った。鴻海傘下に入った後、白物家電を中心に製品数を大幅に増やし、東芝のノートパソコン事業を買収するなど拡大路線を敷いた。ただ経営資源が分散し、次の柱となる事業を確立できていない。

 閉塞(へいそく)感を打開するカギは、戴会長兼社長が「ブランドを支える武器」と位置付けるデバイス(部品)。フルハイビジョンの16倍の解像度を持つ8Kパネルと画像処理エンジン、自社のスマートフォンに採用した有機ELパネルなどを開発した。経営に余力が生まれ、先進デバイスを相次ぎ世に出す“シャープらしさ”は復活した。

 中国では失地回復に向け、「アクオス」に代わって高級テレビブランド「睿視(えいし)」などを立ち上げる。シャープ自ら販売網を構築し、8KテレビやIoT(モノのインターネット)対応家電など日本の先進商品をつぎ込む。「真のシャープの技術力を消費者に見せたい」と意気込む戴会長兼社長。スマホ市場の不振から鴻海も業績が低迷している今、シャープの独り立ちは待ったなしだ。
(文=大阪・平岡乾)

日刊工業新聞2018年12月25日

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