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中国との合弁で日本の造船メーカーは生き残れるか

中国との合弁で日本の造船メーカーは生き残れるか
中国との合弁で日本の造船メーカーは生き残れるか

揚子江船業の太倉工場(江蘇省太倉市)

 三井E&Sホールディングス傘下の三井E&S造船(東京都中央区)は2019年4月に中国の揚子江船業(江蘇省)と三井物産の3社で造船事業の合弁会社を設立。揚子江船業の低コスト建造ノウハウと三井E&Sの技術力を融合。国際分業を進め、物流やエネルギー輸送の増大が期待される中国の新造船需要を取り込む。

 新造船需要は回復傾向にあるが、韓国造船所が政府支援を受けて受注攻勢を強めるなど船価低迷は続く。

 このため三井E&Sは今春、常石造船(広島県福山市)とも商船事業で提携するなど構造改革を急ピッチで進めている。造船業界では川崎重工業が中国進出で先行し成功を収めているほか常石造船も中国やフィリピンで工場を運営する。生き残りをかけ国際分業が新たな潮流になりそうだ。

 新会社の資本金は約112億円。揚子江船業が51%を出資し、残り49%を三井E&Sと三井物産で握る。揚子江船業の売り上げは3200億円規模でバラ積み運搬船など年50隻超を建造する中国最大の民営造船所。複数工場を持ち、そのうち一つを新会社が運営する。最大200億円超を投じて最新鋭の建造ドックも新設する。社長は揚子江船業から出し、三井E&Sから幹部クラスを派遣する。新会社は5年後に売上高700億―800億円を目指す。

 三井E&Sは千葉事業所と玉野事業所で新造船を建造しており海外建造は初。日本での商船建造は継続するが、環境対応船や艦艇、官公庁船を軸に運営する。汎用的なバラ積み船などは中国の合弁会社で建造する方向。三井物産は営業面で支援する。

 揚子江船業は合弁会社を通じて三井E&Sの技術力や設計力、生産性向上ノウハウを習得。難易度の高いガス運搬船など事業領域の拡大を目指すもよう。
日刊工業新聞2018年10月12日

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