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今日からノーベル賞発表、有力候補は多士済々

今日からノーベル賞発表、有力候補は多士済々

生理学医学賞の有力候補、京大の本庶特別教授

 ノーベル賞の発表が1日に始まる。有力候補と目される研究者にとっては、心待ちとも落ち着かないとも言える季節であろう。

 かつて日本人のノーベル賞は京都大学出身者が多いイメージだった。初の受賞者・湯川秀樹博士を筆頭に、京大が日本人の自然科学3賞受賞者の大半を占めた時期が長かった。だが2000年以降、様相は変わった。徳島大学、山梨大学、埼玉大学など旧帝国大学ではない地方大学出身の受賞者も相次いでいる。

 それでも「京都ゆかり」というくくりでみれば、島津製作所の田中耕一シニアフェローや、京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長らがすぐに思い浮かぶ。やはり京都は縁が深いのだろう。

 近年は名古屋大学関係者の受賞が目立ち“一大勢力”となっている。また富山市から岐阜県高山市へ抜ける国道41号線が、沿道の宇宙線研究施設『スーパーカミオカンデ』や近隣の出身者にちなんで「ノーベル街道」と呼ばれるなど、ゆかりのあり方も多様化した。

 直近の受賞者は2016年の生理学医学賞に輝いた東京工業大学の大隅良典栄誉教授。昨年は受賞者がいなかった。今年の有力候補は出身も業績も多士済々。

 今日発表の生理学医学賞では、体内の異物に抵抗する免疫ブレーキ役のたんぱく質「PD―1」を発見した京都大学の本庶佑(たすく)特別教授が有力候補。PD―1の働きを抑えれば、免疫細胞によるがん細胞への攻撃が再活性化することを発見し、これを応用した小野薬品工業の抗がん剤「オプジーボ」の開発につながった。

 免疫の暴走を抑える特別なT細胞「制御性T細胞」を発見した大阪大学免疫学フロンティア研究センターの坂口志文教授も候補に挙がる。正常な免疫機能の維持に必要とされ、アレルギーや自己免疫疾患を引き起こすリンパ球の活性化と増殖を抑える。制御性T細胞群の発生を遺伝子レベルで操作できるようになれば、自己免疫疾患などの治療に役立てられるという。

 コレステロールを下げる薬の開発につながった物質「スタチン」を発見した東京農工大学の遠藤章特別栄誉教授も有力だ。

 生命科学のデータベース(DB)という新しい分野でも日本人の有力候補者が浮上した。米科学情報企業のクラリベイト・アナリティクス(フィラデルフィア市)は京都大学の金久実特任教授を有力候補者に選定。金久特任教授は全遺伝情報(ゲノム)などのビッグデータ(大量データ)から生体システムの機能を解読するDB「KEGG」を開発。学術機関や製薬企業など幅広く使われている。

 だれであっても、日本人研究者の栄冠を大いに祝いたい。
日刊工業新聞2018年10月1日の記事に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
昨年、「どうなる日本の科学」と題しこれまでのノーベル賞受賞者へのインタビュー連載を行ったが、ほぼすべてが日本の科学技術政策に危機感を抱いていた。それもかなり辛辣な言葉で。ぜひ関連記事もお読み下さい。

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