「営業利益を20年代に現在の倍以上にする」電子材料事業にAI・IoTの追い風
非鉄金属各社、提携・M&Aや生産増強
非鉄金属各社の電子材料関連事業が好調だ。背景にあるのはIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、自動車の電動化などの技術の普及だ。銅製品や電池材料などの生産能力増強を各社が推進。将来有望な材料技術を持つ他社との資本提携や、M&A(合併・買収)を通じた事業強化に取り組む動きも増えている。
非鉄大手が発表した2018年4―6月期連結決算のうち、電子材料関連部門ではJX金属や住友金属鉱山の好調が目立つ。JX金属は電材加工事業の営業利益(国際会計基準)が前年同期比14・3%増の72億円に拡大。スマートフォンなどの部材となる圧延銅箔や半導体製造工程で使う薄膜形成材(スパッタリングターゲット)の販売増が寄与した。
住友鉱は材料事業の税引き前利益(国際会計基準)が同35・8%増の65億円に伸びた。特に車載用リチウムイオン二次電池などに使用する電池材料は、売上高が同89・7%増の275億円と快走が続いている。
三井金属は原料高などにより機能材料事業の経常利益が同3・8%減の62億円と減益になったが、高機能スマホなどに使用する極薄銅箔の販売量は同約13%増となった。三菱マテリアルも、多結晶シリコンの販価下落などの影響で電子材料事業の経常利益が減益となったものの、「半導体向けを中心に販売は堅調」(佐々木晋常務執行役員)。19年3月期通期については同事業の経常利益見通しを期初予想比9億円増の70億円(前期は45億円)に上方修正した。
こうした企業の決算とともに、業界団体の統計にも電子材料の堅調ぶりが反映されている。日本伸銅協会は、18年度の伸銅品需要が前年度比2・3%増の84万200トンになると試算。3年連続でプラスになるとの見通しを示す。
中でも全体の約3分の1を占める銅条は、同1・8%増の27万5300トンに伸びると予想する。自動車用端子や半導体、スマホ向けの銅条が好調に推移しているのに加え、車の先進運転支援システム(ADAS)向けなど新規用途も拡大する見込みだ。同協会の柴田光義会長(古河電気工業会長)は「車の電動化や自動制御化、IoTなど、将来有望な分野に伸銅品は深く関わっている」と説明し、中長期にわたる市場の成長を期待する。
「ダウンストリーム(下流)事業の営業利益を20年代に現在の倍以上にする」。こうした野心的な目標を掲げるのは、JX金属の大井滋社長だ。同社は川の流れに例え、銅鉱山を主体とした資源開発を上流事業、金属製錬を中流事業、電子材料関連を下流事業とそれぞれ定義。IoTやAIなどのデジタル技術で社会課題を解決する超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に向けて、下流事業の領域が拡大するとみている。
現在の主力製品である圧延銅箔や半導体用スパッタリングターゲットについては、20年度に向けて生産能力を17年度比約30%増強する。さらにドイツのH・C・スタルクから、コンデンサーなどに使用するタンタル・ニオブ粉末の事業を買収。またグループ会社の東邦チタニウムとタツタ電線との連携強化に向け、親会社のJXTGホールディングスから両社の株式を取得するなど矢継ぎ早に手を打つ。「大量生産型の鉱山、製錬事業に対し、電子材料はニッチであっても世界シェアの高い製品を増やし、成長を目指す」(大井JX金属社長)方針だ。
他社も負けていない。住友鉱は車載用リチウムイオン二次電池向けの正極材料「ニッケル酸リチウム」の生産能力を段階的に増強している。また17年10月には、パワー半導体用の炭化ケイ素(SiC)基板を低コストで生産する技術を持つサイコックス(東京都港区)の株式を取得。同技術の量産検証を進めており、電気自動車(EV)などの車載用途を中心に低価格SiC基板の供給を目指す。
三井金属は積層セラミックコンデンサー(MLCC)向け銅粉の生産能力増強を進める。高温で溶かした金属に高圧水を衝突させ、金属粉を作る「水アトマイズ法」による銅粉の生産能力を、20年4月までに現在比50%増強する計画だ。車の電装化やスマホの高機能化、家電製品のIoT化などを背景にMLCCの需要増が今後も続くとみて、銅粉の増産体制を整える。
非鉄大手が発表した2018年4―6月期連結決算のうち、電子材料関連部門ではJX金属や住友金属鉱山の好調が目立つ。JX金属は電材加工事業の営業利益(国際会計基準)が前年同期比14・3%増の72億円に拡大。スマートフォンなどの部材となる圧延銅箔や半導体製造工程で使う薄膜形成材(スパッタリングターゲット)の販売増が寄与した。
住友鉱は材料事業の税引き前利益(国際会計基準)が同35・8%増の65億円に伸びた。特に車載用リチウムイオン二次電池などに使用する電池材料は、売上高が同89・7%増の275億円と快走が続いている。
三井金属は原料高などにより機能材料事業の経常利益が同3・8%減の62億円と減益になったが、高機能スマホなどに使用する極薄銅箔の販売量は同約13%増となった。三菱マテリアルも、多結晶シリコンの販価下落などの影響で電子材料事業の経常利益が減益となったものの、「半導体向けを中心に販売は堅調」(佐々木晋常務執行役員)。19年3月期通期については同事業の経常利益見通しを期初予想比9億円増の70億円(前期は45億円)に上方修正した。
こうした企業の決算とともに、業界団体の統計にも電子材料の堅調ぶりが反映されている。日本伸銅協会は、18年度の伸銅品需要が前年度比2・3%増の84万200トンになると試算。3年連続でプラスになるとの見通しを示す。
中でも全体の約3分の1を占める銅条は、同1・8%増の27万5300トンに伸びると予想する。自動車用端子や半導体、スマホ向けの銅条が好調に推移しているのに加え、車の先進運転支援システム(ADAS)向けなど新規用途も拡大する見込みだ。同協会の柴田光義会長(古河電気工業会長)は「車の電動化や自動制御化、IoTなど、将来有望な分野に伸銅品は深く関わっている」と説明し、中長期にわたる市場の成長を期待する。
「ダウンストリーム(下流)事業の営業利益を20年代に現在の倍以上にする」。こうした野心的な目標を掲げるのは、JX金属の大井滋社長だ。同社は川の流れに例え、銅鉱山を主体とした資源開発を上流事業、金属製錬を中流事業、電子材料関連を下流事業とそれぞれ定義。IoTやAIなどのデジタル技術で社会課題を解決する超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に向けて、下流事業の領域が拡大するとみている。
現在の主力製品である圧延銅箔や半導体用スパッタリングターゲットについては、20年度に向けて生産能力を17年度比約30%増強する。さらにドイツのH・C・スタルクから、コンデンサーなどに使用するタンタル・ニオブ粉末の事業を買収。またグループ会社の東邦チタニウムとタツタ電線との連携強化に向け、親会社のJXTGホールディングスから両社の株式を取得するなど矢継ぎ早に手を打つ。「大量生産型の鉱山、製錬事業に対し、電子材料はニッチであっても世界シェアの高い製品を増やし、成長を目指す」(大井JX金属社長)方針だ。
他社も負けていない。住友鉱は車載用リチウムイオン二次電池向けの正極材料「ニッケル酸リチウム」の生産能力を段階的に増強している。また17年10月には、パワー半導体用の炭化ケイ素(SiC)基板を低コストで生産する技術を持つサイコックス(東京都港区)の株式を取得。同技術の量産検証を進めており、電気自動車(EV)などの車載用途を中心に低価格SiC基板の供給を目指す。
三井金属は積層セラミックコンデンサー(MLCC)向け銅粉の生産能力増強を進める。高温で溶かした金属に高圧水を衝突させ、金属粉を作る「水アトマイズ法」による銅粉の生産能力を、20年4月までに現在比50%増強する計画だ。車の電装化やスマホの高機能化、家電製品のIoT化などを背景にMLCCの需要増が今後も続くとみて、銅粉の増産体制を整える。
日刊工業新聞2018年8月17日