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ステーキハウスでロボットが実現する“おもてなし”

外食産業で活用広がる、人と分業で互いの長所生かす
ステーキハウスでロボットが実現する“おもてなし”

後片付けの食器の搬送はサウザーに任せる。食べ終えたステーキの皿は合計するとかなりの重量になる(ブロンコビリー店舗)

 外食産業やホテルなどのサービス業分野で、ロボットを導入する動きが相次いでいる。製造業と違って、サービス業分野は人間の笑顔やおもてなしといった精神的要素を伴うため、ロボット化は不向きとする声も少なくなかった。だが、人手不足による人件費の上昇でロボット導入をせざるを得ない状況になってきた。ロボットと人間の長所をうまく組み合わせる協業的な使い方も登場している。

 業務用厨房などを扱うニチワ電機(兵庫県三田市)は、ステーキハウスのブロンコビリー保木間店(東京都足立区)向けに、Doog(ドーグ、茨城県つくば市)が開発した追従運搬ロボット「サウザー」を納入した。ニチワ電機はサウザーの販売代理店として、さまざまな提案を行っている。

 サウザーは、レーザーセンサーで人や台車などの対象物を見分けて、後について走行を行うほか、反射テープのラインを使った無人走行もできる。積載重量は120キログラムと重量物の搬送が可能。走行途中に障害物がある場合は避けるか自動停止する。

 ブロンコビリーの店内では、食事を終えて退店した後のテーブルを店員が片付けて、皿などの食器類をロボットを載せて調理室へ運ぶ。ニチワ電機によると、実は「当初はこのロボットを、来店客への配膳サービスに使う予定だった」という。

 実際に配膳サービス向けとして試験導入すると、店のオペレーションにロボットが必ずしも合わないことが分かった。ステーキハウスの来店客数は3―5人で家族連れが多い。家族にとっては、ジュワジュワと音を立てるステーキを店員が1個ずつテーブルに並べる方が喜ばれ、満足度が高まる。

 営業効率を重視する飲食店にとって、混雑時の回転率をどう上げるかは切実な問題だ。ブロンコビリーもランチタイムに店前で長い行列ができているのに客をなかなか誘導できなかった。原因を調べると、先客が退店した後のテーブルセットに時間がかかり、次の客をすぐに案内できていなかった。このためロボットを使いテーブルの準備を早める。

 後片付けの食器の搬送をサウザーに任せることで、店員はテーブルセットに集中できる。ステーキで使う食器は鉄製で重い。大人数の片付けはかなりの重量になる。これまでは店員が数人分の食器を抱えて運び、調理室とテーブルの間を何回も往復していた。

 サウザーにより店員は重量物を運ぶ負荷がなくなり、接客サービスに笑顔が生まれる好循環が期待できるという。ブロンコビリーに続き、複数の大手外食が、サウザーの導入を検討している。

 ロボットベンチャー企業のコネクテッドロボティクス(東京都小金井市)は、ハウステンボス(長崎県佐世保市)内に、ロボットたこ焼き屋「オクトシェフ」をオープンした。多軸ロボットが画像認識装置を使ってたこ焼きを調理。人間は食材の仕込みやトッピングを担当する。たこ焼きの調理は生地の流し込みや焼き上げといった、暑さの中での重労働だ。ロボットとの分業で、人間は熱い鉄板前に立つ必要がなく、身体的負担が減る。その分、接客や他の仕事に力を注げる。

 モリロボ(浜松市中区)はクレープを自動で焼く、クレープロボット「Q」を開発した。クレープの生地は薄くて破れやすく、上手に焼くのが難しい。クレープロボットはレコードプレーヤーの要領で円盤を回し、均等にクレープ生地を広げる。客は焼き上がるさまを見て楽しめ、店員は暑い作業から解放される。

外食店で店員の後について走行する「サウザー」

(文・嶋田歩)
日刊工業新聞2018年8月15日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
ファミリーレストランで混んでいる時などに余裕がなさそうな従業員の方を見かけます。ロボットによって業務が効率化され、接客サービスに余裕が生まれると客としても嬉しいなぁと思いました。

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