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「資源一本足打法」からの脱却へ、三井物産はICTでどう戦うか

斎藤ICT事業部長に聞く
「資源一本足打法」からの脱却へ、三井物産はICTでどう戦うか

斎藤正記ICT事業本部長

 三井物産は非資源分野の収益拡大を進め、「資源一本足打法」からの脱却を図っている。この戦略の中で、重点事業領域と位置付けているのが、ICT(情報通信技術)事業だ。従来はあまり得意としてこなかった領域で、どう戦っていくか、今後の戦略を斎藤正記ICT事業本部長に聞いた。

 ―流通事業本部にデジタル戦略室を新設し、ICT事業本部で手がけていた一部の事業を移管しました。
 「食や小売り、ファッション、ヘルスケア、交通などBツーCでネットを使う必要性が増すとみられ、Eコマースなどは、複数の部署に仕事がまたがる。デジタル戦略室は、縦割り組織の商社の中で、人的なインターフェースになって、事業本部間の接点を作る。今後、流通事業本部の事業も取り入れ、事業室から事業部にすることも視野に入れている」

 ―今後の投資の方向性は。
 「アクセントを付けて投資をしていく。総花的になると、弱みになってしまう。通信サービスのインフラ事業など、大型の事業投資には苦しんでいる。しっかり選別して、モニタリングし、きちんと育てていけるものに投資する。少額投資でノウハウを学び、自分たちに取り込む。また、海外では単独での投資は難しいので、パートナーと組んでいかなければならない」

 ―この分野で三井物産はどのような立ち位置を目指しますか。
 「AI(人工知能)などは、まだユーザーが確立されていないが、デジタルを使わない産業はないし、ノウハウを付け加えれば生産性も高まる。モノやソリューションを売るだけでなく、総合的な提案力を身につけて、川上から川下まで対応できる、デジタルサービスプロバイダーを目指している。また、国内外の新興企業と接点をもって、育てていくということも考えている」

 ―事業本部としての定量的な目標は、どこに置いていますか。
 「事業本部の保有資産を積み上げる。現状、保有資産は1000億円だが、これを20年3月期に2000億円に引き上げる。今期はすでに250億―260億円程度見えていて、既存事業の強化と新規事業の投資など、やれることをやって積み上げていく」
日刊工業新聞2018年5月29日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
三井物産は1月にデジタル技術の活用で、部門を超えて意見交換するスペース「d・space(dスペース)」を開設。社内だけでなく、外部からも出入りができるようにするなど、交流の拠点にする。この分野における事業拡大の足がかりは、他部門や外部といかに連携できるか。dスペースをアイデア創出の拠点にする。

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