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「人工知能を語り尽くそう!」日本が世界で勝つために(後編)

元Google・村上、東大・松尾、ドワンゴ・山川、IGPI・塩野、Preferred ・西川による刺激的な討論会
 <モデレーター>
 ●東京大学大学院工学系研究科准教授 松尾豊氏
 <パネリスト>
 ●エナリス社長(元グーグル米国本社副社長兼日本法人社長) 村上憲郎氏
 ●ドワンゴ人工知能研究所所長 山川宏氏
 ●経営共創基盤(IGPI)取締役マネージングディレクター、塩野誠氏
 ●Preferred Networks社長兼最高経営責任者 西川徹氏



機械学習などの技術を創造するエリート集団を常に生む仕組みを


 松尾 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの技術を、今後どう展開していくのか、日本が世界に勝っていくにはどうしたらいいか、といった話題も取り上げたい。今技術として注目していることがあれば。

 塩野 企業としての視点でいうと割と単純で、強力なアルゴリズムをつくるか、非常に多くのデータを持つか。両方持つと勝てるといった感じで、それが例えばグーグルだ。私はメーカーなどから「その投資は見合うのか?」「PLに反映できるのか?」という問いを経営者からもらうことが多い。グーグルなどが本気で人材1人を何億円もかけてスカウトしている。今後日本が勝つには、人材を育てていくしかないと思う。一方、技術面では画像認識が進んできて、例えばコンビニでカードを出さず現金を使っても、顔などが認識され、それが補足され続ける、といったことが近いうちに起こりうる話だ。

 アナログの理解なしにAIロボットはスマートに動き出さない

 西川 技術的な観点では、これからデバイスと人工知能はどうつなげていくかが重要になる。たくさんのセンシングデータを解釈し、それをどうアクチュエーターに結びつけ、動作させるか。アクチュエーターがアクションを起こすとそれが環境に影響を与え、その結果がまたセンシングされるので、データが自動的にとれるサイクルが回っていく。

 カギは、アクチュエーターやセンシングのアナログの部分をいかに理解して、そして人工知能に取り込んでいくかというところ。制御工学や機械工学の研究も行っているが、そこは深遠なる分野。その理解なしに、人工知能を単純にロボットにくっつけてもロボットがスマートに動き出すという世界は来ないだろう。

 制御装置1つとっても、非常に高度なテクノロジーが必要で人工知能がカバーできない領域もある。だから、デバイスへの深い理解と、そこに人工知能、機械学習を溶け込ませていくことが必要だ。もう1つ重要な領域はネットワーク。IoTでモノ同士が協調できるようになるので、ネットワークに高い性能が要求される。つまりレイテンシー(遅延)の問題をいかに解決していくか。

 多くのデバイスを協調させようとすると、1つずつは1ミリセカンドのレイテンシーでも、それは非常に長時間なレベルになってしまう。だからネットワークデバイスが高度になり、デバイス自身がデータ処理をしてさまざまな機械を協調させ、そのネットワークの部分に人工知能を埋め込んでいくことで、IoTから本当の価値を引き出すことができる。

 松尾 脳の中ではいろいろな機能が使われている。アクチュエーターの制御が例に出たが、人間にはそうしたものが備わっているのか。

 山川 人間みたいな知能をつくりたいというのは、人工知能の研究が50~60年前に始まったときからの夢。いろいろな機能を組み合わせて人間のアーキテクチャーみたいなものをつくろうとしている流れがある。例えば認知アーキテクチャーの分野で一番難しいとされていたパターン認識はディープラーニングでレベルがぐっと上がってきた。そこでAIとかITの技術にディープラーニングを組み合わせてできるようになるマージン(儲け)、チャンスがこれからたくさんある。

 手ざわり感のある世界とコンピュータサイエンスがつながりを持ち始める
 
 村上 今までコンピュータサイエンスは、モノからどんどん離れてきた。キーボードと液晶画面の「間」の作業をひたすらやってきた。ところがここへ来て、モノの世界というか自然界、手ざわり感のある世界と、コンピュータ、デジタルの世界とのつながりをもう一度見直す動きがある。それと、ここは最終的には文部科学省の仕事になるが、(西川さんの)Preferred Infrastructureのようなエリート集団を恒常的に生み出す仕組みを、つくれるかどうかも日本の課題だ。

 松尾 私もその危機感は持っている。大学でディープラーニングのような新しい技術をちゃんとできる学生を輩出していかないと。それに加えて、企業の方に新しい技術を学んでもらう場も一刻も早くつくり裾野を広げなければならない。

 塩野 デバイスの話が出たが、やはり電池関連とか電源が問題となる。今後、世の中のセンサーが1兆個を超えるといった推測があるが、そうしたときに電源をどうするかが重要になる。日本の研究者やメーカーが、非常に得意とする分野だ。そうした「武器」を売ったり手助けをしているうちに、だんだんと自社サービスができてくれば良いと思う。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
後編はより具体的な事例が出てきてビジネス化へのヒントになるのではないか。一方で村上さんのカレンシー(通貨)の視点は非常に示唆に富む。ちょうどギリシャ危機の最中に、AIが発達することで世界的な通貨危機リスクが減る方向に行くのか、あるいはその逆なのか。

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