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米ミシガン州は自動運転のメッカになるか

トヨタがテスト施設を10月開設
 トヨタ自動車の人工知能(AI)研究開発子会社の米トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI、カリフォルニア州)は、10月に米ミシガン州で自動運転専用のテスト施設を開設する。同州オタワレイク市内のミシガン・テクニカル・リソース・パークに新施設を建設する。投資額は明らかにしていない。約24万平方メートルの土地を使い、公道では危険が伴う運転事例も安全な環境で再現し、自動運転の試験を推進する。

 同パークは約136万平方メートルの研究施設で、自動車メーカーや部品メーカーがテストコースとして使用している。トヨタは約2・8キロメートルの楕円(だえん)形テストコース(写真)の中に新施設を建設する。混雑した都会の交通状況や滑りやすい路面、入り口・出口のある片側4車線の高速道路などを再現する。

 TRIは、米ウーバー・テクノロジーズが3月に起こした死亡事故を受け一時的に自動運転の公道試験を中断しているが、数週間以内に再開するという。

日刊工業新聞2018年5月8日



シリコンバレーがライバル?


 米ミシガン州で全米50州としては初めて、自動運転車について路上走行実験から利用、販売までカバーする包括的な規制を盛り込んだ州法が成立した。同州のリック・シュナイダー知事が9日、法律に署名した。ハンドルやブレーキペダルがない自動運転車や、人間の搭乗者がフロントシートにいない場合でも公道走行実験を許可するなど、自動運転の事業化を狙う企業に寛大な制度となっている。

 ハンドルもペダルもなく、運転手を必要としない自動運転車については、グーグルが実用化を進めているほか、フォードも完全自動運転車を2021年までに実用化する予定でいる。ミシガン州は新制度に基づき、自動車会社やIT企業が自動運転車をライドシェアサービスに利用したり、複数の車両が隊列を組んで走行したりする場合でも認可する方針だという。

 最近ではグーグルはじめテクノロジー企業の集積するシリコンバレーが自動運転車開発のメッカとなりつつある。そうした中、自動車産業の中心地デトロイトを抱えるミシガン州としては、自動運転車の事業化を計画する企業の意向を取り入れた法制度により、この分野での地位奪還を果たす考えだ。

 米国ではミシガンを含め、カリフォルニア、ネバダ、テネシー、フロリダの5州と首都で特別区のワシントンDCが自動運転車についての法制化を実施済み。ウーバーが自動運転の実験拠点とするピッツバーグではペンシルベニア州が制度づくりを進めている。

 ただ、州ごとに法制度が異なるのは、自動運転の事業者にとっても利用者にとっても使い勝手が良くない。そのため、フォードやグーグル、ウーバーなどが参画する「より安全な道路のための自動運転連合」は、「各州は道路安全で重要な役割を担っているが、州ごとにパッチワークにならないよう、全国レベルでの法的な枠組みを提供すべきだ」との声明を出し、統一的な法制度について連邦政府のリーダーシップを求めている。

2016年12月11日付日刊工業新聞電子版


※内容は当時のもの
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
一般道で起こる「想定外」や「難題」をどうやって再現するのか気になります。

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