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住宅・不動産市場が大混乱も、生産緑地の「2022年問題」って何?

約8割が宅地として放出へ
 生産緑地の「2022年問題」への懸念が広がっている。生産緑地とは市街化区域内の農地で、面積は東京ドーム約2800個分に当たる約1億3000万平方メートルに及ぶ。その8割が宅地として放出される可能性が生じるのが2022年だ。新たな宅地が大量に生まれれば不動産・住宅市場に混乱をもたらしかねない。国は生産緑地の保全に動きだし、四半世紀ぶりの政策転換に臨む。

小学校新設


 東京都心のベッドタウンとして人口流入が続く千葉県船橋市。約183万平方メートルの生産緑地を抱える。同市の西部地域では、大規模な宅地開発によって児童数が増加。36年ぶりとなる小学校の新設計画が進行中だ。「地区によっては大規模マンションの開発で小・中学校や保育園の不足が起こっている。都市計画全体の中で生産緑地の問題を考える必要がある」(船橋市都市計画課)と宅地の急増に懸念を示す。

 生産緑地は、30年の農地管理義務と引き換えに、固定資産税が宅地のおよそ200分の1になることもある土地だ。相続税の納税猶予も認められている。22年は法改正に基づく生産緑地地区の指定から30年となり、農地管理義務が外れて生産緑地の自治体への買い取り申し出が解禁になる。

 最初に指定された土地は約1億平方メートル。その大部分が市場に流入する、とされるのが2022年問題だ。

大きな意義


 ただし、この四半世紀で都市部の農地への評価は大きく変わっている。地元産で作り手の“顔が見える”農産物へのニーズをはじめ、環境面や防災面でも都市部に農地がある意義は大きい。国は16年に都市農業振興基本計画を策定。「いずれ宅地にすべきもの」(国土交通省都市計画課)として、農業振興策からも外れていた生産緑地を、持続可能な都市に欠かせないものとし、大きく政策を転換した。

 17年には生産緑地法を改正。18年4月に「特定生産緑地制度」を施行し、実質的に生産緑地の指定を10年延長する措置を講じた。「『農地を農地のままで』が基本的な姿勢。法改正で生産緑地をもっと使いやすくし、安定的な経営につながる施設を建てやすくした」(同)。国交省では法改正の説明会をこれまで50回以上開催。農地保全に強い手応えを得ているという。

農地貸し出し


 さらに国会では現在、実質的に生産緑地を他人に貸し出せる「都市農地の貸借の円滑化に関する法律案」が審議中。秋にも施行される見通しだ。

 実際のところ、22年に買い取り申し出が可能になる生産緑地のうち、4―5割程度はすでに相続税猶予を受けている。もし買い取りを申し出ると多額の税負担が生じる。実際は大半が指定延長を選ぶとの見方もある。

 ただし一方では、「住宅・不動産業界にとって生産緑地は最後のフロンティア」(業界関係者)との声も上がる。条件の良い土地を手に入れようとする住宅メーカーの営業攻勢も水面下で始まっている。22年を前に地権者が「大量供給で値下がりする前に売却を」と考えてもおかしくない。
   
日刊工業新聞2018年5月1日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
もし野放図に農地が放出されれば、荒廃した土地が増えたり、需要のない賃貸アパートが乱立したりする可能性もある。混乱を避けるためにも、国には生産緑地法改正のポイントを可能な限り早く周知し、浸透させる努力が求められそうだ。 (日刊工業新聞社・齊藤正人)

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