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創業者の義理の息子が社長に。倒産へと転がり始めたベテラン社員の独立

今商、経営経験のない事情承継で失敗
 今商は1974年4月に今里冷機商会として創業、主に船員向け食品用冷蔵機械やエンジンルーム冷却用の空調機器・部品などを卸していた。新造船や中古船の設備需要が好調に推移し受注が増加した2007年9月期に売上高約6億2000万円を計上していた。

 一方で、利益は僅少にとどまり金融機関からの借り入れで運転資金を賄っていた。そうした中、代表の高齢化を理由に金融機関は後継者の確保を促すようになった。白羽の矢が立ったのは現代表の深田氏。別企業に勤めていた深田氏は創業者の義理の息子で、15年9月に代表取締役に就いた。

 しかし、同時期にベテラン社員が顧客、仕入れ先を引き連れて独立。さらに、国内の造船業界の不振や中国の景気低迷により船舶流通は減少し、主力製品の取扱量が激減。修理部品といった単価の低い製品が増えたことで利益率は大幅に落ち込んだ。

 この間、海外船会社との取引拡大に向け子会社を通した顧客開拓を実施。しかし、先行投資が膨らむとともに4000万円以上の未収金が発生したことで経営を圧迫した。

 資金繰りも厳しくなったことで、金融機関ばかりか代表個人、社員などからも運転資金を調達していた。その際、価値のない在庫や存在しない在庫までも評価した上で、翌期の売り上げの一部を前倒しで計上した決算書を作成。それをもって資金を調達していた。

 17年6、7月には各金融機関に返済条件の変更を要請していたが、12月の支払いの見通しが立たなくなったため事業継続を断念し、自己破産を余儀なくされた。

 業界環境の悪化に加えてベテラン社員の退職など、まさに“内憂外患”。経営経験のない代表にとっては不運の連続だったと言えよう。結果として事業承継に失敗した格好となった。企業を継続していく上で、後継者育成や後継者選びがいかに重要かがわかる。
(文=帝国データバンク情報部)
<会社情報>
今商(株)
住所:大阪市東成区玉津2−9−2
代表:深田豊氏
資本金:1000万円
年売上高:約2億400万円(17年9月期)
負債:約2億4500万円
日刊工業新聞2018年4月3日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 義理の息子でも事業承継がうまくいった例も多くある。当人が前の会社でどういう仕事をしていて、オーナーシップを兼ね備えたマネジメント能力があったかどうか。実力者の番頭など社内から経営者を選んだ方が良いという意見もあるが、ただ10~20年のスパンで見ると、優秀なサラリーマンが必ずしもうまくいっているわけではない。2代目、3代目の親族が継いだ方が結果的には良いこともある。  サラリーマン経営者は四半期や半期、1年という短期間で結果が出せることを目指しがちで、長期的な投資施策がどうしても手薄になる。しかし短期で見えていることは実のところ誰にでも見えていることでもあり、事業のユニークさ、斬新さがどうしても失われてしまい、顧客にとってもつまらないものになる。

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