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停滞するビール消費、花見商戦で需要喚起なるか

各社が“コト消費”を演出
停滞するビール消費、花見商戦で需要喚起なるか

一番搾りの桜デザイン缶は昨年の2割増の売れ行き

 気温の上昇により、全国各地でサクラの開花便りが相次いできた。ここ数日は寒の戻りであいにくの空模様だったが、週末にかけて各地とも晴天予想で、絶好の花見日和になることが見込まれる。ビール各社は花見シーズン向けにサクラの花びらをデザインした限定パッケージ商品を投入。コト消費でビール消費を盛り上げようと、懸命だ。

 花見シーズン向けに、スペシャルパッケージ商品を発売しているのはアサヒビールやキリンビール、サッポロビールなど。アサヒは「スーパードライ」ビールのほか、第三のビール「クリアアサヒ」と焼酎「かのか」で桜花パッケージの限定商品を発売。スーパードライでは業務向けに瓶ビールも発売する。キリンは「一番搾り」、サッポロは「ヱビス」ビールで限定パッケージ商品をそれぞれ発売している。

 各社とも、中身は通常のビールや焼酎と同じ。限定パッケージにすると消費者には新商品を発売するのと同様の視覚効果があるため、購買喚起が期待できる。スーパーやコンビニエンスストアなどの小売り側も、花見需要向けの総菜盛り合わせや弁当、菓子商品の隣に桜花パッケージ商品を陳列することにより、花見気分で売り場全体を“演出”する。

 実際の購買喚起効果はどうか。アサヒグループホールディングスが実施した インターネット調査によると、「今年はお花見に行くつもり」と回答した割合は59・5%に達し、前年を1・9ポイント上回った。「ここ8年間では2014年に次いで2番目に高い比率」(同社)という。消費者の間に節約志向は根強いものの、歓送迎会や入学など節目の時はプチぜいたくを楽しみ、メリハリ消費をしたい意向がうかがえる。キリンでは一番搾りの桜花デザイン缶の出荷量が「前年に比べ、約2割増だ」と話す。

 ビール販売数量は2月に9カ月ぶりに前年同月比プラスとなったものの、業務用商品値上げ直前の駆け込み需要に支えられた面が大きく、厳しい環境に変わりはない。健康志向や酒類好みの多様化で消費がビールから、缶チューハイや清涼飲料に流れている実態もある。

日刊工業新聞2018年3月23日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ビールは、乾杯需要に見られるように“めでたい酒”のイメージが強い。花見で消費を盛り上げられるか、ビール各社の売り込みにも力が入る。 (日刊工業新聞第ニ産業部・嶋田歩)

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