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FIT終了、家庭の蓄電池が仮想発電所になる日 

「19年はバッテリーパリティーの入り口」(エリーパワー・小田佳取締役)
FIT終了、家庭の蓄電池が仮想発電所になる日 

エリーパワーの蓄電池

 2019年10月末を最後に、固定価格買い取り制度(FIT)による売電が終了する家庭が出てくる。発電した電気を売るよりも、自宅で使う自家消費が拡大すると予想されている。期待ほど普及していない蓄電池業界にとって需要喚起のチャンスが訪れる。蓄電池大手は19年以降も見すえ、成長戦略を描く。

 「19年はバッテリーパリティーの入り口」。蓄電池大手のエリーパワー(東京都品川区)の小田佳取締役はこう期待する。太陽光発電が1キロワット時の電気をつくるコストが、電力会社の発電コストや電力料金と同等になることを「グリッドパリティー」と呼ぶ。蓄電池の購入費用も含めた同等がバッテリーパリティーだ。

 FIT終了後の太陽光パネルはグリッドパリティーも下回り、もっとも安い電源になる。日中に発電した電気を充電し、夜間に使えば電力会社からの購入量を減らして節約になる。問題は1台100万―150万円はする蓄電池の価格だ。コストが下がらないと自家消費の恩恵を受けられない。

 それでも19年、自家消費が始まると「蓄電池の価値が高まってバッテリーパリティーに近づく」(小田取締役)と語る。非常用や、安い夜間電力を充電する節電用途だけの現状よりも充電・放電の頻度が上がるからだ。

 そして「仮想発電所(VPP)がバッテリーパリティーを決定的にする」。VPPは各家庭にある蓄電池をIoTで束ね、一つの発電所のように扱う。電力不足の時、一斉に放電すると火力発電所に匹敵する調整力を発揮できる。放電して需給調整に協力した家庭に対価を支払うビジネスが検討されている。

 非常用、節電、自家消費、VPPへと用途が広がると「蓄電池がフル活用され、金銭的価値も生まれる」(同)。同社は2万台以上の導入実績があり、VPPに参加すると大きな調整力を発揮できる。

 オリックスとNECなどが共同出資するONEエネルギー(東京都港区)は家庭向けに蓄電池レンタルを手がけ、1万件の顧客を抱える。すべての蓄電池の運転データはクラウドに集まり、そのデータ解析から「最適な提案ができる」(オリックス蓄電池営業第一チームの西田邦博マネジャー)。

 自家消費に最適な充放電のタイミングを割り出し、遠隔から指示できる。VPPで需給調整サービスを提供する事業者にとっても1万件のビッグデータは貴重。データを根拠に蓄電池を自動操作できるからだ。

 VPPの事業化が見込まれるのは20年以降。現状、蓄電池は10万―20万台の普及にとどまる。エリーパワー、ONEエネルギーとも経済産業省のVPP実証に参加し、需要の浮上に備えている。
(文=松木喬)
日刊工業新聞2017年2月27日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
 たくさんの企業が家庭用蓄電池を発売したはずなのに今でも商品を出しているのは・・おそらくエリーパワー、京セラ(ニチコン、サムスン)、シャープ、オリックス(NEC)、パナソニックぐらい。大手にOEM供給している電池メーカーもあるので、ここで上げた企業がメーカーという訳ではありませんが。この記事を合わせ2月はFITの「19年問題」を4本掲載しました。

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