CATV各社が格安スマホで攻勢、強みを生かせるか
成熟市場に危機感、新たな収益源模索
格安スマートフォン市場は、異業種からの参入や携帯大手の値下げ施策により、競争が激化している。この厳しい環境の中、ケーブルテレビ(CATV)事業者が格安スマホサービスに乗り出し、攻勢を強めている。CATVの強みを生かせるとの判断だが、背景にはCATV市場の成熟化という危機感がある。
東京都や神奈川県で事業を展開するイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム、東京都世田谷区)。音声通話とデータ通信が利用できる格安スマホサービスを8日に開始し、本格参入した。
イッツコムのカスタマー本部アライアンス営業部に所属する菅道政主幹は「今こそ参入するべきだと判断した」と力を込める。格安スマホは消費者の認知度が高まっており、顧客を獲得しやすい時期と考えた。厳しい事業環境は意に介さない。
日本ケーブルテレビ連盟(JCTA)によると、格安スマホサービスを提供するJCTA加盟ケーブル事業者は、2017年12月時点で116社に上る。「新規参入は現在も毎月1―2社程度増えている」(JCTA)という。
CATV事業者は顧客の自宅を訪問して営業したり、接続工事を手がけたりする従業員を抱える。このサービス体制を活用すれば、格安スマホの契約手続きや初期設定を訪問先で支援できる。高齢者を中心に、スマホの手続きや操作に悩む人は少なくない。同事業者は既存のビジネスモデルの強みを生かし、顧客の拡大を目指す。
イッツコムも「格安スマホはサポート体制の不十分さが大きく、このことが普及しない理由になっている。訪問サポートにより、顧客が格安スマホを契約する際のハードルを低くできる」(菅主幹)と自信を見せる。またサービスの提供対象は、すでに接点がある既存顧客に絞っているため、他社との競合を過度に意識しなくて良い利点もある。
CATV事業者が格安スマホ事業に参入する背景には、主力の有料放送市場などの成熟がある。JCTAは「(人口減などにより、既存サービスは大きな成長が見込めないため)各社は新たな収益の柱を求めている」と明かす。訪問サポート体制という既存の資産を生かせる格安スマホサービスに参入しない手はない。
CATV最大手のジュピターテレコム(JCOM)も端末の品ぞろえなどを強化し格安スマホ顧客の拡大を急ぐ。人気が高いiPhone(アイフォーン)6Sの認定整備済み品の取り扱いなどをはじめることで既存の顧客に利用を促し、囲い込みを図る考えだ。
JCOMの井村公彦社長は「(自社の格安スマホサービスである)『JCOMモバイル』の加入者は、その他の顧客に比べて解約率が断然低くなる」と強調する。
足元では、携帯大手がスマホと固定通信のセット提案を強化し、固定通信の需要を取り込んでいる。JCOMにとって固定通信は主力のビジネス。携帯大手の攻勢により、固定通信の顧客が流出しており、危機感は強い。スマホサービスを用意することで、そうした流出を抑制する狙いがある。
(文=葭本隆太)
東京都や神奈川県で事業を展開するイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム、東京都世田谷区)。音声通話とデータ通信が利用できる格安スマホサービスを8日に開始し、本格参入した。
イッツコムのカスタマー本部アライアンス営業部に所属する菅道政主幹は「今こそ参入するべきだと判断した」と力を込める。格安スマホは消費者の認知度が高まっており、顧客を獲得しやすい時期と考えた。厳しい事業環境は意に介さない。
日本ケーブルテレビ連盟(JCTA)によると、格安スマホサービスを提供するJCTA加盟ケーブル事業者は、2017年12月時点で116社に上る。「新規参入は現在も毎月1―2社程度増えている」(JCTA)という。
CATV事業者は顧客の自宅を訪問して営業したり、接続工事を手がけたりする従業員を抱える。このサービス体制を活用すれば、格安スマホの契約手続きや初期設定を訪問先で支援できる。高齢者を中心に、スマホの手続きや操作に悩む人は少なくない。同事業者は既存のビジネスモデルの強みを生かし、顧客の拡大を目指す。
イッツコムも「格安スマホはサポート体制の不十分さが大きく、このことが普及しない理由になっている。訪問サポートにより、顧客が格安スマホを契約する際のハードルを低くできる」(菅主幹)と自信を見せる。またサービスの提供対象は、すでに接点がある既存顧客に絞っているため、他社との競合を過度に意識しなくて良い利点もある。
CATV事業者が格安スマホ事業に参入する背景には、主力の有料放送市場などの成熟がある。JCTAは「(人口減などにより、既存サービスは大きな成長が見込めないため)各社は新たな収益の柱を求めている」と明かす。訪問サポート体制という既存の資産を生かせる格安スマホサービスに参入しない手はない。
CATV最大手のジュピターテレコム(JCOM)も端末の品ぞろえなどを強化し格安スマホ顧客の拡大を急ぐ。人気が高いiPhone(アイフォーン)6Sの認定整備済み品の取り扱いなどをはじめることで既存の顧客に利用を促し、囲い込みを図る考えだ。
JCOMの井村公彦社長は「(自社の格安スマホサービスである)『JCOMモバイル』の加入者は、その他の顧客に比べて解約率が断然低くなる」と強調する。
足元では、携帯大手がスマホと固定通信のセット提案を強化し、固定通信の需要を取り込んでいる。JCOMにとって固定通信は主力のビジネス。携帯大手の攻勢により、固定通信の顧客が流出しており、危機感は強い。スマホサービスを用意することで、そうした流出を抑制する狙いがある。
(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2018年2月23日